大阪市立大学のグループは、予後が極めて悪いとされるスキルス胃癌の難治性の原因を世界で初めて解明し、その機序に基づいた新しい治療法の開発に成功した。これによりスキルス胃癌だけでなく膵癌などの難治性癌の特効薬開発が可能になる。

 難治性のスキルス胃癌は胃癌全体の約10%を占め、年間数千人が発症している。急速に増殖進展し高頻度に転移するスキルス胃癌に、現在の治療法による効果は不十分であった。研究グループは、スキルス胃癌細胞の増殖転移に正常間質細胞(線維芽細胞、内皮細胞、免疫細胞など)が関与することを明らかにしてきたが、癌組織が正常間質細胞を誘導する仕組みなど、その詳細は不明だった。

 今回、研究グループはマウスモデルを用いてスキルス胃癌の正常間質細胞誘導シグナルの解明に取り組んだ。その結果、スキルス胃癌細胞が骨髄細胞誘導物質(ケモカインCXCL1)を産生して正常骨髄細胞を癌組織内に誘導し、癌細胞周囲に集合した骨髄由来正常細胞が癌細胞の強さを増加させることを明らかにした。さらに、骨髄細胞誘導物質にシグナル阻害剤(CXCL1の受容体CXCR2のシグナル伝達を阻害する低分子化合物物質)を投与すると骨髄細胞の癌への集積が抑制され、スキルス胃癌の増殖や転移が減少して治療に成功した。これによりCXCL1/CXCR2が骨髄由来細胞誘導シグナルであり、治療薬として有効であることが明らかになった。

 この成果により、CXCL1/CXCR2シグナルを標的にした治療薬を開発すれば、胃癌の治療成績は飛躍的に向上するとみられる。さらに、研究グループはCXCL1/CXCR2シグナルが膵癌などの難治癌でも認められることを確認しており、CXCL1/CXCR2を標的とした治療法は多くの難治癌に対する新しい治療法として期待できる。

大阪市立大学

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大学ジャーナルオンライン編集部

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