理化学研究所生命システム研究センター集積バイオデバイス研究ユニットの田中陽ユニットリーダー、東京電機大学の釜道紀浩准教授らの共同研究チームが、ミミズの筋肉を搭載した小型ポンプを開発した。

 外部からの電力供給に依存せず、材料が自然に還元される機械の構築はクリーンテクノロジーの開発目標の一つ。生物を材料とする機械はクリーンテクノロジーの理想の形だといえる。また、微量サンプルの分析や体内埋め込み装置開発といった最先端研究分野においてポンプの小型化が求められているのに対し、従来の機械工学では、電源やワイヤーなどが障害となりその小型化に限界があった。

 そこで研究チームは、生体筋肉組織の利用により、小型で効率のよいポンプが実現できるのでは、と考案。制御性・応答速度・収縮力に優れたミミズの体壁筋に注目し、フトミミズの筋肉をシート状にして電気刺激に対する収縮力を測定。ポンプの駆動素子として利用可能なことを確認した。そのうえで、ミミズの筋肉を用いた「ミミズポンプ」を試作したところ、既存の同サイズのポンプに匹敵する機能を持つことが明らかになった。

 この研究では刺激に電気を用いているが、駆動のエネルギー源は生体共通のエネルギー源であるアデノシン三リン酸(ATP)。ミミズと同様の構造が人工的に製作可能になれば、電気刺激が不要になる可能性があるため、超微小ポンプ開発の今後のモデルのひとつとなる。さらに、電気使用が困難な下水管内のロボットや血管内ロボットなど、工業・医療といったあらゆる分野での応用が期待される。

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