九州大学大学院医学研究院の林克彦教授の研究グループは、成体マウスの尻尾にある組織由来のiPS細胞から培養皿上で卵子を作製することに成功。これらの卵子は正常に受精し健常なマウスとなった。不妊原因の究明や治療法の開発につながるという。今月、英国科学雑誌『Nature』にオンライン掲載された。

 卵子のもつ生物学的・医学的価値は極めて大きく、多能性幹細胞から体外で卵子を産生する培養システムの開発は長い間望まれていたが、これまでにいずれの動物種においても成功例はなかった。これは卵子が長期にわたり極めて複雑な過程で形成されるため、体外培養での再現が困難なことが原因だった。

 今回、始原生殖細胞から卵子ができるまでの5週間を3つの培養期間に区切り、各期間について約3年にわたる基礎的な培養条件(基礎培地、血清濃度、成長因子、有機化合物など)の検討の結果、多能性幹細胞から卵子への分化過程を再現できる培養システムを開発した。開発した卵子産生培養システムを用いることにより、ES細胞、胎仔の細胞由来のiPS細胞、さらには成体の尻尾由来のiPS細胞のいずれの細胞からも卵子を産生することができた。また得られる卵子数も極めて多量(一回の培養実験で約600~1,000個)であった。また、卵子産生培養システムで得られた卵子は、その由来に関わらず、野生型の雄マウスの精子と受精させると、健常なマウスに発生した。得られたマウスは野生型のマウスと同様に成長し、正常に子供をつくる能力も持っていた。

 今回の研究により、世界で初めて機能的な卵子を産み出す卵子産生培養システムの構築に成功した。今後、卵子形成の謎の解明だけでなく、不妊原因の究明や治療法の開発が期待される。

九州大学
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大学ジャーナルオンライン編集部

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