日本学術会議は名古屋議定書の批准に際しての問題点の摘出と対応策を検討。遺伝資源を利用する生命科学分野の学術研究において、研究者コミュニティーが連携して取り組むべき措置を提言として取りまとめた。

 名古屋議定書(以下、議定書)は、「遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分(ABS)」に関する国際的な取り決め。2010年に名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議で採択された。91カ国とEUが署名、その後50カ国で締結された。

 日本学術会議によると、議定書は遺伝資源の範囲・派生物等があいまいで、提供国による訴追や利益配分要求等の係争のリスクがあり、また、デジタルDNA情報等の管理も、今後問題となる可能性があるという。そのため、公正で合理的な国際的コンセンサス形成に向けた政府と研究者コミュニティーによる継続努力を求め、国際的なイニシアティブ発揮のために議定書を早急に批准することを提言している。

 また、研究者の認識不足などは利益配分が不利になる恐れがあるが、各資源提供国により異なる国内法令や手続きに関する情報提供を行う体制は十分ではないという。このため、政府や研究者コミュニティーが関連情報について周知徹底する必要を指摘。また、政府には情報収集やトラブル予防のための専門的な体制を構築し、専門家の適切な配置と人材育成を行うよう要望している。

 さらに、日本は議定書に基づく資源提供国としての国内措置を検討中だが、内容しだいで研究者に不利を招き、海外組織による遺伝資源の無許可持ち出しの恐れがあるとする。他の提供国の状況も勘案しながら、政府や研究者による国内措置の継続的な検討を要望している。

参考:【日本学術会議】提言 学術研究の円滑な推進のための名古屋議定書批准に伴う措置について(PDF)

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大学ジャーナルオンライン編集部

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