芝浦工業大学の濱崎仁准教授は日本建築学会の研究チームで長崎県にある軍艦島の鉄筋コンクリート造(RC造)建築物の補修のために2011年から行ってきた調査結果を発表しました。2015年7月5日に軍艦島の一部が「明治日本の産業革命遺産」としてユネスコ世界文化遺産に登録されました。しかし、軍艦島にあるRC造建築は長い年月にわたる塩害や風雨にさらされてきたために老朽化による崩壊の危機が迫っています。世界遺産登録に当たりこれらを保存するための措置が急がれています。

 老朽化が進んだRC造建築物の保存は世界的にも例が無く、非常に困難です。歴史的価値を損なうことなく経年変化を抑えることが課題となっています。歴史的建造物の保存・修復はできるだけ
(1)当時と同じ材料・工法を用いること
(2)外観をできるだけ変えないこと
(3)外観が変わる場合にあってはオリジナルと明確に区別ができ、元に戻せること
を満たすことが条件となります。このうち(1)は不可能なため、濱崎准教授は(2)と(3)の要件を満たして修繕することを目指します。そこで亜硝酸リチウムという物質を用いて鉄筋の腐食を修繕する方法の有効性を検討しました。亜硝酸リチウムにはこれ以上鉄が腐食しないよう保護膜を作る効果があるからです。

 コンクリートが崩壊する主な原因は鉄筋のさびです。コンクリートの原料となるセメントはアルカリ性なので鉄の酸化を抑えてくれますが、長い年月が経ち中性化や塩分の浸透が進むと鉄筋がさびやすくなります。この点に着目し、防腐剤の亜硝酸リチウムなら当時のうちっ放しコンクリートの外観を変えずに鉄のさびを食い止めることができるといいます。今回の実験は現地で亜硝酸リチウムの有効性や必要となる量を確認しました。

 軍艦島で建築物の保存に成功すれば他の歴史的建築物の保存ばかりか、想定されている社会インフラの老朽化を食い止め長寿命化することにも役立つと期待されています。

出典:【芝浦工業大学】世界遺産「軍艦島」の建築群を維持する研究を発表

この記事が気に入ったらおねがいします。

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。