北見工業大学の大野浩助教と北海道大学の飯塚芳徳助教、国立極地研究所を中心とした研究グループは、南極内陸部にあるドームふじ基地で採取された深層氷の詳細な物理化学分析を行い、地球で最も古い氷の一つとされるアイスコア最深部の物理化学的性質を解明した。

 南極氷床を円柱状にくり抜いた氷のサンプル「アイスコア」の研究は、過去の気候変動の歴史を解明するため、日・米・欧により積極的に行われている。ドームふじ基地で2003~2007年にかけて掘削されたドームふじアイスコアの最深部は、70万年以上遡って過去の地球環境を読み解くことが期待されており、同時に南極氷床最深部は、低温・高圧の環境に耐えうる未知の極限微生物が生息すると考えられている。しかし、南極内陸部における氷床底面付近の氷の起源や存在状態はほとんどわかっていなかった。

 研究グループは、最深部(3000~3035m深)から回収されたアイスコアの物理化学的性質を詳細に調査。深層氷の起源と履歴を明らかにするため、深層氷と、浅層氷(0~13万年前、およそ0~1750m深)に含まれるイオンの濃度と水の酸素同位体比に対して主成分分析を行うなど多岐にわたる情報を系統的に取得して総合的に解析し、氷床最深部の環境や生じている物理化学プロセスを解明した。

 研究の結果、深層氷は全て温暖期の天水(降雪)起源であること、さらに氷床底面付近で化学成分の著しい再配分が生じていること、再配分現象は不純物の空気ハイドレート(空気と水が低温・高圧下で反応することで形成される結晶)粒子表面や氷結晶粒界への偏析、粒界を伝った移流によって引き起こされていることなどが分かった。

 今後、比較的低温環境下に置かれている古い氷を探し当てれば、本研究成果をもとに保存状態の良い古環境情報を抽出することが可能となる。また、 今回明らかになった氷の物理化学構造に関する新たな知見に基づいて、氷床微生物学における議論が進むことが期待される。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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