京都大学の井垣達吏教授らの研究チームは、Sasと呼ばれる細胞表面タンパク質ががん細胞の排除に必要であることを発見した。がん細胞のみを組織から排除する新規がん治療法開発の可能性があるという。

 がんの元になる細胞が正常細胞に囲まれると組織から排除される現象が10年ほど前から知られている。これは「細胞競合」と呼ばれ、現在世界的に注目されている。 しかし、正常細胞ががん細胞を認識し排除する仕組みについては不明だった。

 今回、がんの元になる変異細胞をショウジョウバエの眼の組織に生じさせ、同時にさまざまな遺伝子の機能を正常細胞側で一つ一つ破壊し、変異細胞が排除されなくなる遺伝子変異を探した。その結果、Sasと呼ばれるタンパク質をコードする遺伝子が正常細胞で破壊されると、変異細胞が排除されないことが分かった。

 Sasは細胞表面に存在し、隣接する細胞の表面タンパク質と結合することで隣接細胞の性質を変化させることができるタンパク質だ。がん細胞ではEGFRと呼ばれるタンパク質とJNK(タンパク質リン酸化酵素)が同時に活性化することで細胞増殖能と生存能を高めている。ところが、正常細胞のSasががん細胞のPTP10Dに結合して活性化させると、がん細胞内のEGFR が不活化し、がん細胞の増殖能と生存能が著しく低下することが分かった。

 PTP10Dと類似のタンパク質がヒトのがんに抑制的に働くことが報告されている。今回発見したメカニズムがヒトでも働いているとすれば、細胞排除現象を利用した新たながん治療法開発が期待される。今後は、SasとPTP10Dの役割の解明と哺乳類細胞を用いた検証を行う予定だという。

京都大学

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大学ジャーナルオンライン編集部

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