明治大学(東京都千代田区)大学院理工学研究科 電気工学専攻の松田康宏さんは、身体の筋肉に対して揉む、たたく、さするなどの手技療法を行い、体の痛みをどの程度緩和できたかを脳活動から数値的に評価する方法を開発。松田さんは、同大学理工学部の小野弓絵准教授、日本体育大学保健医療学部の小野塚實教授らと共同で研究に取り組んだ。

 通常、術者の手によって対象者の筋肉や関節にアプローチをする手技療法の効果は、施術前後の触診や、関節の曲がる角度を計測したりして評価する。しかし施術部位の痛みの評価は、患者に口頭やスケールを使って表現してもらうなどの方法しかなく、あいまいで客観性に乏しいこと、言語による意思疎通をとることが難しい患者には使えないといった問題点があった。

 そこで、松田さんら研究グループは、痛み刺激を認知するときにはたらく脳の前頭前野という部位に着目。この前頭前野の活動を人体に無害な近赤外光を使って計測する近赤外分光法(NIRS)を用いてモニタしながら、股関節を曲げるために必要な太ももの筋に対して手技療法を施し、その前後で股関節を最大の角度まで曲げた時の前頭前野活動と、主観的な痛み強度を計測した。
手技療法を施すと、股関節を施術前と同じ角度まで曲げても痛みが少なくなり、NIRSで計測される脳活動も同様に減少していたことが判明。さらに、一般に手技療法の対象となる痛み強度の範囲では、被験者が感じた痛みが少ないほど脳活動も小さいという比例関係が得られ、脳活動から患者の痛みの強度を評価できる可能性が示された。

 自らも柔道整復師であり、柔道整復師養成校の教員として日々施術や教育を行っている社会人大学院生の松田さんは、「今後実際の患者さんを対象にした臨床研究や、術者の養成のためにこの方法を活用していく予定。体温や血圧のように、痛み感覚の変化を数値化する診断システムの開発を通じて、術者は患者さん一人一人に適した施術方法を選択できるようになり、患者さん自身も来院ごとに施術効果を実感できることで、日常生活習慣の改善への意欲付けに役立つことが期待される。」と語っている。

 本研究は、日本体育大学学術研究助成金を受けて行われ、日本生体医工学会の学会誌2017年2月10日付の『生体医工学』Vol.55(No.1)に掲載された。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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