順天堂大学の研究グループは、福島原子力発電所員に対する追跡調査により、原発事故の災害関連体験によるメンタルヘルスの不調は時間とともに回復するが、「差別・中傷などの社会批判による不調は3年経過後も強く残ることが分かった。災害後支援策の具体的な改善に役立つことが期待される。

追跡調査は東日本大震災(2011年3月11日)後の4~5月に実施。福島原子力発電所事故における災害関連体験を経験している所員は、未経験所員に比べて、心的外傷後ストレス反応や精神的苦悩といったメンタルヘルスの不調があることが判明。しかし、不調の時系列的な変化は十分に検討されていなかった。

そこで、研究グループは3年間(2011年~2014年)の縦断研究を実施。原子力発電所員のメンタルヘルスを長期的に調査し、福島原子力発電所事故後の災害体験との因果関係を検討した。

その結果、「惨事ストレス」、「被災者体験」、「差別・中傷」といった災害関連体験を経験した所員の心的外傷後ストレス反応のリスクはいずれも時間経過により徐々に低下したが、3年経過してもなお未経験所員に比べ持続していた。特に、「差別・中傷」といった社会批判を受けた所員は、受けていない所員に比べて、2011年時点で約6倍、2014年時点でも約3倍そのリスクが高かった。また、同僚を失った「悲嘆体験」 経験がある所員は、経験のない所員に比べて、2011年時点で約2倍、2014年時点でも回復せず同等のリスクが認められた。

今回の調査結果から、災害時の良好なメンタルヘルスの維持には、組織的な介入策など広範囲で長期的な支援が必要と分かった。このことは、さまざまな災害における支援者・被災者のメンタルヘルス対策を考える上で重要という。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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