軍事研究をしないとする過去の声明見直しを検討してきた日本学術会議の検討委員会(委員長・杉田敦法政大学教授)は過去の声明の基本方針を継承するとした新声明案をまとめた。4月の日本学術会議総会で正式決定される見通し。

 声明案によると、防衛装備庁が進める軍事、民生両面で利用可能な技術研究は、防衛省による研究への介入が著しく、学術の健全な発展という見地から問題が多いと指摘。むしろ必要とされるのは科学者の自主性や自律性が尊重される民生分野の研究資金充実だとした。

 さらに、研究成果が科学者の意図を離れ、軍事目的に転用されて攻撃目的に使用されることもあるとし、大学など研究機関は軍事面、安全保障面での研究とみなされる可能性のある案件に対し、適切性を技術的かつ倫理的に審査する制度を設けるべきだと主張している。学会などがそれぞれの学術分野でガイドラインを設定することも求めている。

 日本学術会議は1950年に戦争を目的とする科学研究を絶対に行わないとする趣旨の声明、1967年に軍事目的のための科学研究を行わないとする声明を発表している。
しかし、防衛装備庁が2015年から軍事研究への助成制度をスタートさせ、助成制度応募の可否をめぐって大学内で混乱が見られたことから、2016年から検討委員会を設置して声明を見直すかどうかの対応を検討していた。2月には東京都内で安全保障と学術の関係に関するシンポジウムを開き、軍事研究をしないとする過去の声明の取り扱いについて意見交換したが、その際軍事研究に反対する声が続出した。

大学ジャーナルオンライン編集部

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