京都大学白眉センターの石本健太特定助教らの研究グループは、ミクロの世界での水の流れを表す式(ストークス方程式)を使って、ヒト精子の運動とその周りの液に現れる特徴的なパターンを見出した。

 生命の誕生はひとつの精子と卵の出会いからはじまるが、その前に精子は他の多くの精子たちとの「競争」に勝たなければならない、と一般に言われている。この精子の旅の「物語」はどこまでが本当なのか、本研究グループは、精子の泳ぎに周りの液の流れを表す式から精子の旅にアプローチした。

 これまでの研究では、ストークス方程式を使って、精子の泳ぎの仕組みが調べられてきた。この式では、泳ぎ方の形状の情報だけで、微生物の運動が求められる。しかし、ストークス方程式から求められた泳ぎ方を実際の精子の顕微鏡映像で検証した例はなかった。
そのため、本研究グループは、この方程式を解いた答えと顕微鏡映像での実際の精子の運動を比較し、数理的なアプローチの有効性を検証することを試みた。

 顕微鏡映像から取得した情報をもとに、周りに生じる流れの式を解析した結果、精子の運動をコンピュータ上で再現することに成功した。また、周りの流れの様子を同じ式から計算してみると、複雑な流れの中にも一定のパターンがあることがわかった。このパターンをもとに精子の運動を捉え直してみると、精子の運動にも尾をひねりながら押したり引いたりする特徴的なリズムが潜んでいることが明らかになった。このリズムを流れの方程式で記述することで、精子の運動を表す簡単な数式を見出すことに成功した。

 これまでは、運動を「粗視化」して数理モデルを作る際には、「物理的な直感」に頼ることが多かった。だが、今回用いた方法では、実験データから数学的な操作のみだけで精子運動の本質を抜き出した数理モデルが得られるため、様々な種類の遊泳微小生物の運動に適用できると期待される。

 また、さらに研究を進めることで、実験観測が難しい精子の運動の様子を、数理の目で明らかにすることができるようになり、受精に必要な精子の力学的機能への理解がすすむことで、不妊治療の発展にも貢献できるものと期待されている。

京都大学

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大学ジャーナルオンライン編集部

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