熊本大学の河村能人教授は優れた金属線の加工技術を持つ東邦金属株式会社と共同で「KUMADAI耐熱マグネシウム」の極細ワイヤーの開発に成功しました。熊本大学が開発した「KUMADAI耐熱マグネシウム」は世界最強の強度と耐熱性・難燃性を併せ持つ金属です。現在航空機の材料として使われているアルミニウム合金にとって代わる材料になると考えらています。

 マグネシウムはアルミニウムの3分の2程度の重さの金属で、人体に優しく再利用も容易なことで知られています。このマグネシウムにわずかに他の金属を混ぜ、特殊な加工法で作られた合金は軽くて強い材料になります。特に熊本大が開発した「KUMADAI耐熱マグネシウム」は現在航空機の材料として使われているアルミニウム合金と同程度の強度を持つことから新しい航空機の材料として期待されています。一方で非常に頑丈なため、ワイヤーの製造は困難でした。東邦金属はこれまで同じく非常に頑丈で加工が困難なタングステンワイヤーの製造で培った加工技術を有していました。これを「KUMADAI耐熱マグネシウム」に応用することで直径0.05mmの極細ワイヤーを製造する技術を確立しました。日本人の平均的な頭髪の太さが役0.1mmと言われていますが、その半分の太さを実現したことになります。これはマグネシウム合金の細さの世界記録を更新した点も大きな特徴です。航空機材料の溶接や3Dプリンターへの応用も検討されている他、人体に優しいことから手術時に体に埋め込む形で使用する器具としての利用も期待されています。

 多くの技術の進歩の裏には材料となる物質の進歩が欠かせません。画期的な材料の開発は時に既存の技術を飛躍的に進歩させる原動力にもなります。優れた特性を持つ物質の開発は新しい技術を切り開くカギになるでしょう。

出典:【熊本大学】次世代を担う超軽量・高強度の金属極細ワイヤーの誕生!~マグネシウム合金ワイヤーの細線化で世界記録を大きく更新~

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