震災や戦争などにより、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症することがある。PTSD患者は、トラウマ記憶のフラッシュバックや悪夢に悩まされる。その治療には、時間をかけてトラウマ記憶に向き合い、恐怖に慣れることで克服を目指す認知行動療法がとられてきたが、患者の精神的負担が大きいことが問題となっていた。

 筑波大学の坂口昌徳准教授らは、夢が睡眠中の記憶の処理に関わっているという先行研究から、睡眠中にトラウマ記憶を弱められるのではないかと考えた。

 研究グループは、特定の音を聞かせながら電気ショックを与えたマウスを実験に使用。このマウスは、その後音を聞かせるだけでおびえた反応を示すようになる。しかし、睡眠中に同じ音を聞かせた後では、音を聞いた時のおびえた反応が弱まることがわかった。
さらに、レム睡眠とノンレム睡眠での効果を比較し、ノンレム睡眠中に音を聞かせた場合にだけ、おびえた反応が弱まることを明らかにした。

 本研究から、PTSD患者に苦痛を与えることなく、睡眠中の治療でトラウマ記憶を減弱させることができる可能性が示された。これがどのような脳内メカニズムによったものなのか、新しい治療法の開発に向けてさらなる解明も期待される。

論文情報:【Scientific Reports】Auditory conditioned stimulus presentation during NREM sleep impairs fear memory in mice

筑波大学

文系、理系から体育、芸術にまで及ぶ学問を探求し、学際融合、国際化への挑戦を建学の理念とする未来構想大学。

筑波大学は1872(明治)年に開校されたわが国初の師範学校が始まりです。その後、昭和48年に移転を機に東京教育大学から筑波大学へと変わりました。現在の教育体制は9学群、23学類ですが、学生は枠組みを超えて講義を受けることができ、創造的な知性と豊かな人間性を備え[…]

この記事が気に入ったらおねがいします。

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。

大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。