成蹊大学大学院理工学研究科の三浦正志教授は、産業技術総合研究所、昭和電線ケーブルシステム株式会社と共同で高温超電導体のイットリウム系酸化物超電導線材の超電導層の形成プロセスを改良し、現時点で世界最高の磁場中臨界電流密度を実現した。

 モーターや発電機、MRIや重粒子線加速器といった医療機器など、高い磁場が加えられる環境で使用する機器の超電導磁石には、磁場中でも高い性能を維持できる線材が必要である。イットリウム系酸化物超電導線材は、他の高温超電導材料に比べて磁場中の性能が高いが、線材が高価であることや高温・高磁場では磁場中の臨界電流の性能が十分ではないなどの課題があった。

 今回、研究グループは、マルチコートと称した工程(基板に塗布と熱処理を繰り返す工程)で一回に塗布する膜厚を、従来の150nm以上から30nmまで薄くした。これにより、形成される超電導層中の人工ピン止め点を従来の約20nmから約10~13nmに微細化できた。その結果、液体窒素温度(65K)、磁場3テスラ中での臨界電流密度は1cm2あたり約100万アンペアから160万アンペアに向上した。

 この基本原理をもとに、人工ピン止め点材料の選択と高濃度化によりさらなる性能改善に成功し、液体窒素温度(65 K)、磁場 3テスラ中での臨界電流密度は11cm2あたり400万アンペアを達成した。これは現時点ではイットリウム系酸化物超電導線材の世界最高値である。また、臨界電流値は360アンペアを超えた。

 すでにイットリウム系酸化物超電導線材の製造・販売を行っている昭和電線ケーブルシステムは、今回の成果をベースに製品開発を行う予定。産総研と成蹊大学は引き続き高性能化の技術開発により実用化を支援するとしている。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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