大阪大学産業科学研究所の筒井准教授、谷口教授らの研究グループは、1分子素子の熱電変換性能における電極-分子接点構造の影響を、世界で初めて実験的に明らかにした。平均値比で100倍以上の熱電変換性能が実証され、1分子接合の熱電デバイスへの応用が期待される。研究成果は米国科学誌「Scientific Reports」(オンライン)に掲載された。

 電極間に1個の分子を配線した1分子接合は、化学的に極めて精緻に作られている。このナノ構造体は、量子効果を反映した1分子系特有の熱・電気輸送特性を用いて、高い熱電変換(熱エネルギーと電気エネルギーの変換)性能の達成が期待される新しい熱電材料だ。

 2007年に初めて1分子熱電測定が報告されて以来、これまでさまざまな1分子接合について熱電計測が実施されてきた。しかし、1分子接合の熱電性能における電極/分子界面の寄与は、その重要性が理論的に示されているが、実験的に調べることが難しく、これまで検証されていなかった。

 今回、筒井准教授らの研究グループは、ナノ加工ブレークジャンクション素子(微細加工技術を用いてフレキシブルな基板上に作製された中空構造を有する金属細線。電極間一分子構造が作製可能)を応用して、室温下で安定な1分子素子形成を実現し、その熱電性能評価を行った。その結果、1分子素子は電極-分子接点の原子レベルの構造(電極-分子間の距離など)の工夫により、平均値に比べて熱電変換性能が100倍以上も向上可能であることを明らかにした。

 これにより、高性能1分子熱電素子に資する電極/分子接点構造を設計することが可能になり、1分子素子の熱電デバイス応用に展開が期待される。

論文情報:【Scientific Reports】Roles of vacuum tunnelling and contact mechanics in single-molecule thermopower

大阪大学

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