地球温暖化が社会や経済に与える影響は多岐に及ぶ。労働者が暑熱ストレスにさらされやすくなることもそのひとつだ。国立環境研究所と筑波大学の研究グループは、地球温暖化によって追加的に必要となる労働者の熱中症予防コストを推計した。

 国際標準化機構(ISO)などの指針は、熱中症などのリスク低減のため、暑さの度合いと作業強度に応じて労働時間中に休憩を取ることを推奨している。地球温暖化による気温上昇に伴い、より長い休憩が必要となり、経済的な生産性が低下する可能性が指摘されていた。

 そこで研究グループは、気候モデルと経済モデルを複数組み合わせ、世界全体の経済的損失を推計した。具体的には、2100年での気温上昇が異なる4種類の気候シナリオと、経済発展の度合いによる3種類の社会経済シナリオを設定。各組み合わせに対し、AIM/CGEという経済モデルにより、熱中症予防の追加的コストを算出した。このモデルでは、将来の人口やGDP、エネルギー技術の進展度合い、再生可能エネルギーの費用といった様々な社会経済条件を考慮することが可能だ。

 その結果、地球温暖化が最も進む(気温が4.5℃上昇)シナリオでは、21世紀終わりの年間のGDP損失は、全世界で2.6~4.0%に及ぶことが判明。中でも、経済発展が進まない場合、低いエアコン普及率と労働集約的な経済状況が要因となり、損失は最大(GDPの4.0%)となった。

 一方、パリ協定の目標が達成され、気温上昇が産業革命以前と比較して2℃未満となるシナリオでは、経済発展の状況にかかわらず、年間の追加的コストは全世界のGDPの0.5%以下に抑えられた。これは、パリ協定の2℃目標を達成することが世界全体の経済にとって便益となることを意味する。

論文情報:【Environmental Research Letters】Cost of preventing workplace heat-related illness through worker breaks and the benefit of climate-change mitigation(英文)

筑波大学

文系、理系から体育、芸術にまで及ぶ学問を探求し、学際融合、国際化への挑戦を建学の理念とする未来構想大学。

筑波大学は1872(明治)年に開校されたわが国初の師範学校が始まりです。その後、昭和48年に移転を機に東京教育大学から筑波大学へと変わりました。現在の教育体制は9学群、23学類ですが、学生は枠組みを超えて講義を受けることができ、創造的な知性と豊かな人間性を備え[…]

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大学ジャーナルオンライン編集部

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