世界各国で流行し、その致死率の高さから社会的脅威ともなっているHIV(ヒト免疫不全ウイルス)。HIVの制圧には感染リスクの高い集団を見つけ出し対処することが重要だが、自己申告に基づく性行動調査では正確な感染リスクの計測は困難だ。

 そこで、性器ヘルペスの流行レベル(全体に占める感染者の割合)からHIV流行の可能性を推定する手法が考案された。性器ヘルペスは性感染症に対して比較的低リスクな性行動をとる人からも観察され、正確な流行レベルが入手しやすい。しかし、性器ヘルペスとHIV流行の関連性には不明な点が多く、その精度は未解明だった。

 今回、北海道大学の研究チームは、個人レベルの性的接触ネットワーク上でのHIVと性器ヘルペスの流行シミュレーターを開発。HIVと性器ヘルペスでは性的接触ネットワーク構造との関連性が異なり、性器ヘルペスの流行レベルのみではHIVの流行レベルの4割程度しか説明できないことを明らかにした。この改善手法として、性器ヘルペスの流行レベルにネットワーク統計量を組み合わせると、HIVの流行レベルを9割程度推定可能となることもあわせて解明した。

 本研究で構築したシミュレーターを基に、実際の性器ヘルペスの疫学データからHIVの流行リスクアセスメント(調査・評価)の実現が期待される。また、性器ヘルペス以外の性感染症の疫学情報も同時に考慮することでより詳細なHIV感染リスクアセスメントが可能となるとみられ、効果的な性感染症制圧への貢献に期待がかかる。

論文情報:【AIDS】Sexual network drivers of HIV and herpes simplex virus type 2 (HSV-2) transmission

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大学ジャーナルオンライン編集部

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