岡山大学の加藤百合特任助教と宮地孝明准教授らの共同研究グループは、骨粗鬆症治療薬クロドロン酸が、神経因性疼痛や炎症性疼痛、さらには慢性炎症を改善する作用メカニズムを世界で初めて突き止めた。今回の成果は、松本歯科大学、久留米大学、東北大学、九州大学、東京農業大学、味の素株式会社との共同研究によるもの。

 慢性疼痛の罹患者数は世界人口の20~25%ともされるが、副作用の少ない効果的な鎮痛薬はなかった。骨粗鬆症治療薬の一つであるビスホスホネート製剤(第一世代)には、骨疾患患者に複数の鎮痛効果があることが臨床報告されていたが、その作用メカニズムは長らく不明だった。

 エネルギー源として知られるATPは疼痛に関わる神経伝達物質としても作用する。小胞型ヌクレオチドトランスポーター(VNUT)は、このATPを分泌小胞内に運ぶ輸送体だ。研究グループは、ビスホスホネート製剤であるクロドロン酸が、VNUTを選択的かつ可逆的に、極めて低濃度で阻害し、神経細胞からのATP放出が遮断されることを突き止めた。

 クロドロン酸は、神経因性疼痛の第一選択薬であるプレガバリンよりも鎮痛効果があり、眠気などの副作用はない。また、免疫細胞からのATP分泌を遮断することで、炎症性疾患の原因となる炎症性サイトカイン量が低減し、抗炎症効果が認められた。さらに、抗炎症薬である非ステロイド性抗炎症薬よりも強力であり、一般的なステロイド製剤と同等の抗炎症効果を示した。

 クロドロン酸はすでに欧米で骨粗鬆症治療薬として承認されており、ヒトに対する安全性は実証済みで、開発期間も短くコストも抑えられるとみられる。輸送体を標的とした全く新しいタイプの鎮痛薬・抗炎症薬として期待される。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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