神戸大学と国立感染症研究所の研究グループは、インドネシアの健康なボランティア(無症候者)の便中から高率にノロウイルスが検出されることを分子疫学的に証明した。
ノロウイルスは、非細菌性急性胃腸炎の最大の原因病原体とされ、ヒトに感染すると腸管で増殖することが知られている。ノロウイルス感染症の伝播には、感染が起こっていながら明瞭な症状が顕在化しない「無症候感染者」の存在が感染源として重要と推測されているが、その実態は不明だ。
研究グループは、ノロウイルス感染症の伝播様式を明らかにするため、2015~2016年の1年間、インドネシアにおいて無症候の健康なボランティア18人から継続的に糞便検体を収集し、便中に存在するノロウイルスゲノムの疫学解析を行った。インドネシアと日本は地理的にも近く、古くから交流が盛んであるため、感染症の伝播経路としてきわめて重要といえる。また、日本では冬季にノロウイルス感染症の流行がみられるが、亜熱帯気候のインドネシアでは感染流行の実態がほとんどわかっていないという。
解析の結果、512検体中14検体(7人の無症候者)からノロウイルスゲノムが検出され、異なる遺伝子型同士の組換えノロウイルスも検出された。さらに、7人の無症候者のうち2人においては、同じ株あるいは違う株による反復感染が認められた。このことから、無症候者に高率にノロウイルスが感染していることが明らかになり、インドネシアのノロウイルス感染流行に無症候者が感染源として重要であることが示唆された。
今後は無症候から有症状感染への転換に重要なウイルス因子、宿主因子が何であるかや、インドネシアから日本への影響などを明らかにしていくという。