名古屋大学の川口潤教授らはコンピュータシミュレーションを用いて言語隠蔽効果の再現に成功しました。これは犯罪の目撃者証言にも影響を与え、冤罪の原因にもなる現象です。説明する理論には諸説あるものの、実験での再現が難しいためこれまでは検証が困難でした


 犯罪捜査では目撃者が容疑者の顔を見て真犯人かどうかを判断することはとても重要です。ところが犯人の顔を「垂れ目」「鼻が小さい」などの言葉に関連付けて記憶していると、容疑者が垂れ目で鼻が小さいというだけで真犯人だと勘違いしてしまうことがあります。このように言語による記憶の影響で記憶が誤って呼び起こされるのが言語隠蔽効果と言われる現象です。これを再現すシミュレーションは大きく二つのステップに分かれます。犯人の顔を記憶する段階と、容疑者の顔を見て記憶と照らし合わせる段階です。

記憶段階では真犯人である人物Aの顔の画像を記憶します。またその特徴を「垂れ目」「長い鼻」「厚い唇」といった言葉に置き換えて学習させます。これによりコンピュータに人物Aの顔を再び見せた時に、顔の特徴を示す言葉を手掛かりに記憶している顔を思い出せるようにします。次の容疑者の顔を見る段階では「太い垂れ目」「大き目の長い鼻」「厚い下唇」といった真犯人によく似た特徴を持つ人物Bの顔を見せます。するとコンピュータ内では過去に記憶した「垂れ目」「長い鼻」「厚い唇」といった言語記憶が活性化され、人物Aの顔を思い出したのです。つまり人物Bの顔を見た時に、過去に見たことがある犯人と同一人物であると間違えたのです。

こうしてコンピュータによって言語隠蔽効果を再現することができました。さらに「言語によって顔の記憶を間違って思い出す」ことで起こることが示されました。研究が進めば捜査方法の改善にもつながり、言語隠蔽効果による冤罪を防ぐこともできるでしょう。

出典:【名古屋大学】やっぱり、顔の記憶はことばにするとダメ!~世界初のコンピュータシミュレーションによる言語陰蔽効果の再現~(PDF)

名古屋大学
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大学ジャーナルオンライン編集部

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