東京大学医科学研究所の中内啓光教授らの研究成果から生まれた「多能性幹細胞を用いた免疫機能再建法」が、米国に続き日本国内においても平成29年11月15日付で特許登録となった。
本特許は、T細胞からiPS細胞を樹立し、さらに、樹立したiPS細胞を元のT細胞が有していたTCR遺伝子の組み換え構造を保ったまま、機能的なT細胞へ分化誘導する方法に関するもの。

 がん患者の体内においては、がんを排除する免疫機能が様々な原因により低下していることが多い。そのため、免疫細胞、特にがん細胞傷害能の高いT細胞の機能補充や再生が、病態改善や治療効果の向上に有効な手段といわれる。

 中でも重要なのが、がん細胞を特異的に認識する機能で、近年、抗原特異的TCR遺伝子を体外で各種免疫細胞に導入することで、特異的免疫反応を補充・増強する試みがなされている。しかし、この手法では、体外でのT細胞の増殖効率の低さや機能低下、TCR遺伝子導入効率の低さといった課題が存在する。

 これに対し、本特許の技術では、ヒトのT細胞から高い増殖能を有するiPS細胞を樹立することに加え、樹立したiPS細胞を、元となった抗原特異的T細胞と同じTCR遺伝子再構成で、高い抗原特異性を維持した機能的なT細胞へ再び分化誘導することを可能にする。このようにして得られたT細胞を患者体内に移植する免疫細胞治療は、がん治療効果向上の有効な手段となることが期待されるという。

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