東京工業大学の研究グループは、多細胞緑藻であるボルボックスが、球形の体の前端部から後端部にかけて鞭毛の性質を変化させることで、光驚動反応や走光性などの光に対する反応を効率的に行っていることを発見した。

 ボルボックスは鞭毛を使って水中を泳ぐ生物で、光を感受すると光驚動反応(急に強い光を浴びた時に遊泳を停止する反応)や走光性(光源の方向に向かって、あるいは光源から逃げる方向に向かって遊泳する反応)を見せる。

 これらの反応について、これまでに、ボルボックスが光を浴びると前半球の鞭毛のみが運動方向を通常の遊泳時と逆転させることが見出されていたが、その方向逆転を起こす調節因子は不明だった。
そこで本研究では、鞭毛運動調節因子の第一候補とされているカルシウムイオンの効果を確かめる実験を行った。

 まず界面活性剤処理によってボルボックスの細胞膜を溶解する。ボルボックスは死ぬが、生体エネルギー源であるATPを加えると、鞭毛が再び運動を開始し泳ぎだす。この“ゾンビ・ボルボックス法”により、様々なカルシウムイオン濃度条件下で鞭毛運動を観察した。

 結果、カルシウムイオン濃度が高い状態でゾンビ・ボルボックスにATPを加えると、前端部に近い鞭毛は運動方向をほぼ逆転させた。これにより、鞭毛運動の方向逆転がカルシウムイオンによることが初めてはっきりと示された。そして、球のような体の前端部から後端部にかけて、その方向変化の角度が180度から0度まで変化することもわかった。

 鞭毛はヒトの体の様々な器官にも生えており、この研究成果は、鞭毛運動の異常が原因であるヒトの疾患「原発性不動繊毛症候群」の研究にも貢献すると期待されている。

論文情報:【Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, in press】Detergent-extracted Volvox model exhibits an anterior–posterior gradient in flagellar Ca2+ sensitivity

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