総合研究大学院大学の伊藤宗彦博士(研究当時)らの研究グループは、ジュリドクロミス・レガニ(以下、レガニと略記)という魚が、八つ当たり行動を行うことを世界で初めて示した。

 八つ当たりのような社会的に複雑な行動は、洗練された認知能力を持つ動物にのみ見られると考えられてきた。これまで八つ当たり行動が科学的に立証されているのは、ヒト、ヒト以外の霊長類、その他の社会性食肉類に限られていた。

 今回、同グループは、体長の異なるレガニ三個体を大型水槽に入れ、誰が誰に攻撃をしたか綿密に記録した。攻撃は基本的に、体長が大きな個体から小さな個体へと起きる。体長が大きい順に三個体をL、M、Sとし、攻撃行動の時系列を分析したところ、L個体がM個体を攻撃した後、M個体がS個体を5秒以内に攻撃する「八つ当たり行動」が高頻度で見られた。

 この新知見を踏まえ、同グループはさらに行動を検討し、八つ当たり行動の効果を二つ提唱した。一つは、L個体に攻撃されたM個体がS個体に八つ当たりすることにより、「攻撃の矛先をS個体へと変える」という効果。もう一つは、L個体に攻撃されたM個体が直後にS個体に先制して八つ当たり攻撃することで「自分の地位を保つ」という効果である。

 従来、魚は単純な認知・行動パターンしか持たない生物であると考えられてきたが、本成果はこれを覆すものであり、魚も高度な社会的情報処理と意思決定を行っていることを示した。

論文情報:【Proceedings of the Royal Society of London. Series B, Biological Sciences】Redirected aggression as a conflict management tactic in the social cichlid fish Julidochromis regani

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大学ジャーナルオンライン編集部

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