名古屋大学博物館の吉田栄一教授らの研究グループは、化石等を内包する球状の岩塊「球状炭酸塩コンクリーション」の成因論について、世界で初めて統一的に解き明かすことに成功した。

 堆積岩中に普遍的に形成される炭酸カルシウムの球状岩塊(球状コンクリーション)は、約1世紀も前からその成因論について議論がなされてきた。しかし、その明確な成り立ちは不明のままで、形成条件や形成速度を表す関係式についても、統一論としての検証が課題となっていた。

 今回、研究グループは、日本国内および海外の100試料を超える球状コンクリーションからその形成速度と形成条件を検証した。結果、球状コンクリーションが生物起源の炭素と海水中のカルシウムイオンとの急速な反応で形成されることを明らかにした。また、その形成条件はD=VL(D:拡散係数、V:形成速度、L:反応縁の幅)という関係式で統一的かつ汎用的に示されることを世界で初めて発見した。

 さらに、炭酸塩球状コンクリーションの形成速度については、数十万~数百万年はかかるとされていた従来の概念を覆し、実際には数ヶ月~数年程度という非常に速い速度で成長することも解き明かした。

 今回明らかとなった形成条件から、球状コンクリーション形成の再現実験が可能となる。これにより、トンネル内コンクリートの亀裂修復や、大規模地下環境利用(リニアやエネルギー地下備蓄、地下廃棄物処分など)に伴うメンテナンスフリーの長期的地下水抑制(シーリング)技術への応用・実用化に弾みがつくことが期待されている。

論文情報:【Scientific Reports】Generalized conditions of spherical carbonate concretion formation around decaying organic matter in early diagenesis

名古屋大学

真の勇気と知性をもち、未来を切り拓いていける人をめざす

名古屋大学は、9学部・13研究科、3附置研究所、全国共同利用・5共同研究拠点などを擁する総合大学です。創造的な研究活動によって真理を探究し、世界屈指の知的成果を産み出しています。自発性を重視する教育実践によって、論理的思考力と想像力に富んだ勇気ある知識人を育成[…]

岐阜大学

地域に根ざした国際化を展開。学び、究め、貢献する国立大学

東海国立大学機構の構成大学である岐阜大学は、「人が育つ場所」という風土の中で、人材養成を最優先事項とし、質・量ともに充実した教育を行い、豊かな教養と確かな専門的知識と技能、広い視野と総合的な判断力、優れたコミュニケーション能力に加え、自立性と国際性を備えた人材[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。