山梨大学の若山照彦教授らの研究グループは、机の引き出しの中に室温で1年以上保存したマウスのフリーズドライ精子から健康な産仔を作出することに初めて成功した。動物の遺伝子資源も植物の種と同様に安全に長期間保全できる可能性が示された。

 動植物の遺伝子資源の保全は種の多様性維持に不可欠だ。しかし動物の生殖細胞や体細胞は、植物とは異なり液体窒素や超低温冷凍庫が必須なため維持管理費が膨大になる。震災などで液体窒素や電力の供給が停止すれば細胞は溶けて死滅する。

 研究グループは、1998年に世界で初めてフリーズドライ保存の精子から産仔を作ることに成功した。しかし室温では1カ月しか保存できず、長期保存には冷蔵庫が必要だった。その後様々な乾燥方法が考案されたが、フリーズドライ技術は世界中で使用され保存場所も問わないことから、フリーズドライによる精子の長期間保存技術の開発が求められていた。

 今回研究グループは、室温では短期間しか保存できない原因がガラスアンプルビン内に混入した空気であることを突き止め、アンプルビンの非破壊検査などにより高真空アンプルビンを作製。このアンプルビンを室温で1年以上、机の引き出しの中に保存し、精子のDNA損傷度や受精能を調べ後で胚移植を行ったところ、100匹以上の健康な産仔が得られた。産仔作出率は3カ月保存精子の場合とほぼ同程度で長期保存も可能とみられる。

 今後、この方法の信頼性が証明できれば、動物の遺伝子資源も植物の種子と同様に室温で安全に長期保存が可能になるだけでなく、毎年全世界で作られる膨大な数の遺伝子改変マウスの維持費や、不妊治療における精子の保存費の大幅削減が期待できる。

論文情報:【Scientific Reports】Assessing the tolerance to room temperature and viability of freeze-dried mice spermatozoa over long-term storage at room temperature under vacuum

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大学ジャーナルオンライン編集部

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