1911年に発見された超伝導(ある温度以下で突然に物質の電気抵抗がゼロになる現象)は、リニア新幹線や磁気共鳴診断装置(MRI)などで私たちの暮らしに深く関わっている。特に、銅酸化物で見られる高温超伝導は、高い臨界温度のメカニズムを解明するための研究が活発に行われている。

 銅酸化物では、反強磁性の絶縁体物質に電気伝導を担う正孔または電子キャリアを注入すると、反強磁性秩序が壊れて超伝導が発現する。超伝導が発現する物質では、反強磁性のゆらぎが観測されていることから、超伝導の発現メカニズムに反強磁性のゆらぎが深く関わっていると言われている。
一方、大量にキャリアを注入すると超伝導が消失するが、この原因はわかっておらず、キャリアを大量に注入した物質で磁性状態がどうなっているのかも不明だった。

 今回、上智大学と東北大学を中心とする研究グループは、大量に正孔を注入した銅酸化物で2次元の強磁性ゆらぎを世界で初めて観測した。これは、キャリアの注入とともに反強磁性から強磁性へと磁性状態が変化することを意味している。また、超伝導が大きく抑制された物質で強磁性ゆらぎが観測されたことから、強磁性ゆらぎが高温超伝導を阻害している可能性があり、長い間の謎であった、キャリアを大量に注入すると超伝導が消失する原因を解明しうるものとも言える。

 本成果から、これまで反強磁性状態と超伝導状態の存在しか知られていなかった銅酸化物で、大量に正孔を注入すると2次元の強磁性ゆらぎの状態が現れることが明らかとなり、高温超伝導に強磁性ゆらぎが関わっている可能性が示唆された。今後、高温超伝導の研究に新たな道を示すものとして期待される。

論文情報:【Physical Review Letters】Development of Ferromagnetic Fluctuations in Heavily Overdoped(Bi,Pb)2Sr2CuO6+δ Copper Oxides

東北大学

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大学ジャーナルオンライン編集部

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