東京大学、慶應義塾大学の研究グループは、ウェアラブルロボットを用いて遠隔地から他者の身体に働きかけ、二人羽織のように他者の身体を操作することでコミュニケーションできる遠隔共同作業システム「Fusion(フュージョン)」を開発した。

 共同作業を通じた技能や知識の伝達においては、身体的な情報と紐づいたコミュニケーションが重要な役割を果たす。例えば、身体動作を含んだ技能学習などの状況では、トレーナーが学習者の四肢の位置や姿勢を直に動かして整えたり、手を引くなどして動きを誘導したりする。

 しかし、遠隔地間では、動作の共有は視覚的な情報に制限され、コミュニケーションや共同作業は難しくなってしまう。そこで本研究では、離れた他者の視点を共有することに着目し、二人羽織のようなウェアラブルロボットシステムによって身体的な情報を伴ったコミュニケーションを生み出す遠隔共同作業システムを開発した。

 このシステムでは、遠隔地にいる操作者とロボット装着者の2人がほぼ同一の視点から空間を共有し、Directed(直接的な共同作業)、Enforced(動きの指示)、Induced(動きの誘導)の3つのタイプの身体を介したコミュニケーションができる。Directedタイプでは、ロボットハンドを使用した共同作業ができる。Enforcedタイプでは、ロボットアームのアタッチメントを手首用のバンドに取り換えることで、装着者の手先の位置や姿勢を動かすことができる。Inducedタイプでは、ロボットアームで装着者を引っ張ることで狙った方向に歩行を誘導することができる。

 このシステムにより、地理的に離れた状況下での体を介した共同作業や技能学習への応用が期待できるとしている。

論文情報:【SIGGRAPH ’18 ACM SIGGRAPH 2018 Emerging Technologies】Fusion – Full Body Surrogacy for Collaborative Communication

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