鳥取大学の稲葉央助教、松浦和則教授らの研究グループは北海道大学との共同研究により、細胞骨格の一種であるタンパク質ナノチューブ状集合体「微小管」の中に、分子を内包する手法の開発に世界で初めて成功した。これは、「ちくわ」(微小管)の穴にチーズ(分子)を詰めて「チーズちくわ」を創るようなものという。

 細胞骨格の一種である微小管は、チューブリンタンパク質から構成される内径約15nmのチューブ状集合体。微小管の長さは数μm~数十μmにもおよび、その形成、解離はヌクレオチドのGTP、GDPの結合によって制御されている。また、モータータンパク質が動くためのレールとして機能している。そのユニークな性質から、微小管を用いたナノマテリアルが数多く開発されているが、これまで微小管外部への分子修飾は盛んに行われているものの、その内部空間に着目した材料開発は皆無だった。

 研究グループは、微小管結合タンパク質の一種である「Tauタンパク質」のうち、微小管内部に結合すると推定される部位を「微小管結合ペプチド」として設計・合成した。4種類のペプチドを合成して微小管への結合を評価したところ、そのうちの1つが微小管内部に結合することが明らかとなった。さらに、このペプチドを金ナノ粒子に修飾することで、微小管に金ナノ粒子を内包させることに成功した。

 今回、チーズちくわから発想を得て、ちくわ状のタンパク質集合体である微小管に微小管内部に結合するペプチドを開発して分子の内包に成功した。この手法を利用することで、様々なナノメートルサイズの分子を微小管に内包させることが可能となり、微小管を用いたナノマテリアルの新たな展開が期待される。

論文情報:【Chemistry – A European Journal】Molecular Encapsulation Inside Microtubules Based on Tau-Derived Peptides

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