防衛省が軍事転用可能な技術研究を大学などに委託する方針を打ち出した問題で、静岡大学の教育研究評議会は軍事目的ではないと明確に判断されるケースに限り、受け入れ対象とする「防衛省との研究協力に関するガイドライン」をまとめました。受け入れを決めた場合は大学のホームページで公表し、研究結果も公開するとしています。

静岡大教育研究評議会によると、ガイドラインは静岡大の教職員が防衛省や防衛省と委託契約を結んだ大学、企業、研究機関と研究協力を進める際の取り扱いについて定めたもので、軍事目的の研究はそれが例え防衛目的であったとしても受け入れないとしています。共同研究や委託研究以外の技術相談、学術技術指導、実験なども同じ扱いにすると規定しました。

防衛省はこれまで、防衛技術の開発を防衛産業だけに任せてきましたが、2015年度から大学や高等専門学校、民間企業、独立行政法人などにも対象を拡大。3年以内の研究期間で10件程度の研究開発を委託する方針を示しています。
研究テーマは①防衛装備の能力を飛躍的に向上させる技術②新しい概念の防衛装備開発につながる技術③注目される先端技術の防衛部門への適用技術―の3点を挙げ、具体的課題としてマッハ5以上の超音速飛行を可能にするエンジンの基礎技術、赤外線の放射率を低減する素材、空中衝撃波の可視化、複数の無人車両運用制御など28項目を列挙しています。1件当たりの研究費は、他省庁の研究開発補助金に比べ、破格といえる年間最大3,000万円。
方針転換の背景にあるのは、研究開発や調達を管理する防衛装備庁が近く発足することや、安倍内閣が豪州など外国との武器共同開発、武器輸出に力を入れていることと見られています。
しかし、東京大学、京都大学をはじめ、軍事協力に否定的な大学が国内に多数、存在しています。防衛目的の研究だとしても、防衛の範囲が明確でないなどの課題も多く、大学や研究者の間で強い反発の声が上がっていました。
出典:【静岡大学】静岡大学における防衛省等との研究協力に関するガイドライン

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