岡山大学の松本正和准教授らはコンピュータシミュレーションによって、過冷却された水の微細構造を世界で初めて解明しました。この状態で水分子はどのようになっているのかは長年の謎とされていましたが、解明に大きく近づいたことになります。

 地球上において水は極めてありふれた物質ですが、化学的な観点からはその特徴は極めて異常と言えます。例えばほとんどの物質は冷却すると体積が収縮しますが、4℃以下の水は冷却すると膨張して密度が低下します。液体状態の水の中で分子は配置も向きもランダムになっているのに対して、氷の状態では配置が固定され、決まった方向を向くために分子の間に隙間が生じるからです。また、水は通常0℃になると凍り始めますが、それ以下でも凍結しない過冷却という状態も存在します。過冷却状態においても水は膨張をつづけますが、分子がどのようになっているのかは長年の謎となっています。この状態では通常の液体の水と氷の中間の密度を持つため、氷に似た分子の並びになっているのではないかと考えられていました。一方で液体と固体が全く同じ状態とも考えにくいのです。

 グループはコンピュータシミュレーションを用いて過冷却水の中で分子がどのような状態になっているのかを解析しました。その結果いくつかの分子が集合して塊を形成することで密度を低下させ、塊が自由に運動することで液体としての流動性を保った状態になっていることを突き止めました。これはシミュレーション上の結果なので、実験によってこうした水分子の塊が実際に観測されることが待ち望まれています。

 水はその性質がよく分っているかと思いきや、異常ともいえる多くの性質を持ち意外にも分らないことだらけの物質です。水を利用して生きてきた生命は水の異常性を利用して生きてきました。未解明の生命の神秘には水の謎に由来する物も多いかもしれません。水の理解は生命の理解にもつながることでしょう。

 

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大学ジャーナルオンライン編集部

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