東京医科歯科大学医学部附属病院小児科森尾知宏教授と金兼(かねがね)弘和准教授のグループは、2015年7月、重症の先天性肺胞蛋白症の小児に骨髄移植を実施し、世界で初めて成功しました。移植後に症状は改善し11月に退院しました。

 肺には肺胞という数億個の小さな袋状の組織があり、肺胞表面には肺胞を広げるのに役立つサーファクタントというタンパク質を含む物質が存在しています。肺胞蛋白症は何らかの原因で、この物質が肺胞内に溜まってしまう病気で、特に先天性肺胞蛋白症は国内で数例と極めてまれな遺伝性疾患であり、難病指定を受けています。

 患者は1歳女児で、2015年3月に免疫不全症などが認められ同病院に入院しました。免疫細胞の一種である樹状細胞の欠損が原因とされる肺胞蛋白症との検査結果を受け、造血細胞移植により治癒が可能とされました。造血細胞の供給源には骨髄や臍帯血、末梢血があり、患者には5月に臍帯血移植を行いましたが生着不全となりました。そこで7月、父親をドナーとする骨髄移植を実施、移植細胞が患者組織に対して不適合反応を示す急性移植片対宿主病などの合併症を生じましたが、懸命の治療により回復し11月に退院できました。合併症以外に重篤な副作用は認められず、移植後は樹状細胞の回復と肺胞蛋白症の改善がみられたとのことです。

 今回、造血細胞移植により先天性肺胞蛋白症が治癒したことから、先天的な欠陥による原発性免疫不全症を背景とした、さまざまな難病が、造血細胞移植を用いて治癒する可能性が示されました。ただし、樹状細胞の欠損の原因などいくつかの不明点があります。現在、東京医科歯科大学難治疾患研究所生体防御学分野樗木(おおてき)俊聡教授らのグループとともにこれらの原因解明に取り組んでおり、安全で効果的な治療法の開発につなげたいとしています。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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