横浜市立大学肝胆膵消化器病学の中島淳教授、日暮琢磨助教らの研究グループは、横浜市立大学附属病院、その他関連病院との共同研究において、糖尿病の治療薬メトホルミンが大腸ポリープ除去後の再発を抑制することを世界で初めて報告しました。我が国だけでなく先進各国で増加傾向にある大腸がんの化学予防法の確立と、疾患の克服に向けて、この意義は非常に大きいものです。

 大腸がんは日本で2番目に多いがんと言われ、早急な対策が求められています。ポリープ切除で死亡率は下がりますが、切除後の再発や、がんの発症などが課題として残ります。「予防」ががん対策の究極になりますが、医薬品の投与によって行う「化学予防」としては、心筋梗塞などの予防として臨床応用されているアスピリンなどがあります。しかし大腸がんについては、一部の鎮痛薬に予防効果は認めるものの副作用があり、予防法は確立できていませんでした。

 メトホルミンは世界的に広く処方されている糖尿病治療薬ですが、中島教授らのグループは、以前よりこの薬剤に注目し、投与したマウスの大腸腫瘍が抑制されることなどを報告していました。この知見をもとに、大腸ポリープを切除し再発していない患者を対象にメトホルミンもしくはプラセボ(偽薬)を無作為に割り付け、比較試験を実施。1年後に内視鏡検査を行ったところ、大腸前がん病変の新規発生/再発率がメトホルミン群32%に対してプラセボ群では52%と、大腸がんの化学予防薬としてのメトホルミンの有用性を示しました。また、試験期間中にメトホルミンによる重篤な副作用は認められませんでした。

 メタホルミンは化学予防薬に必要とされる「副作用が少ない」「作用機序が明らか」「服用しやすい」「安価」という条件のすべてを満たす薬剤です。また、既存薬のため新薬開発コストの削減につながるといったメリットも考えられます。ただし、本当に大腸がんの発生を抑制するかは長期の経過観察とさらなる検討が必要のため、今後の結果報告が期待されます。

横浜市立大学

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大学ジャーナルオンライン編集部

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