京都大学化学研究所の村田靖次郎教授らの研究グループは、炭素原子が球状に結合しているフラーレンの一種であるC70の内部に水分子を閉じ込め、その挙動観測に成功したと発表。水の基礎的物性の解明やフラーレンC70物性制御に道筋を付けることが可能となったとしています。

 これまで、水の単分子や分子が2個結合した二量体は、外部からの水素結合がない「裸の水分子」状態での観測例はほとんどありません。一方、炭素原子が球状に結合して中空の空間を持つフラーレンは内部に金属や分子を内包すると、空のフラーレンとは異なる物性を持つとされます。

 今回、研究グループは、フラーレンC70に開口部を構築して水分子を挿入し、再び開口部を閉じることで、水分子を内包したフラーレンC70の合成に成功しました。同グループはすでに、フラーレンC60への水単分子の内包に成功していましたが、完全な球状のC60に比べ、炭素原子70個から成るラグビーボール形のC70は内部空間が大きく、水の単分子だけでなく二量体まで閉じ込めることができました。

 合成された小分子内包C70を解析すると、水分子1個では、水素結合がないことから内部で上下に素早く動いており、また、二量体では、分子間に存在する水素結合が切断と再生を素早く繰り返していることが判明しました。外部からの水素結合がない水分子の二量体が得られたのは世界で初めてで、生命に最も関係の深い水の挙動解明を進める事が可能になると説明しています。

 今回の成果により、C70に水分子以外の物質の単分子状態を実現させることで、新しい物性の解明とC70の性質を変化させることが可能になります。今後は、有機薄膜太陽電池の性能向上、生理活性素材の開発、生命現象を解明するためのプローブ分子への応用などが期待されるとのことです。

京都大学

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大学ジャーナルオンライン編集部

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