慶應義塾大学理工学部吉田昭介助教(現所属:京都大学工学研究科)、宮本憲二准教授、および京都工芸繊維大学小田耕平名誉教授、木村良晴名誉教授の研究グループは、帝人株式会社、株式会社ADEKAとの共同により、ポリエチレンテレフタレート(PET)を分解して増殖する細菌を発見、その分解メカニズムの解明にも成功しました。本研究成果は、2016年3月発行の米国科学雑誌「Science」に掲載されています。

 PETは石油を原料として製造され、ペットボトルや衣服等の素材として広く利用されています。しかしリサイクルされているのは総生産量のわずか4.1%であり、大半は廃棄されています。またPETリサイクル手法として主流のケミカルリサイクルには膨大なエネルギーを消費するなどの問題がありました。

 研究グループは、さまざまな環境サンプルを探索する中で、PETフィルムに多種多様な微生物が集まり分解する様子を発見。この微生物群からPET分解細菌を分離することに成功しました。「Ideonella sakaiensis 201-F6 株」と命名されたこの株はPETを分解するだけでなく、栄養源とすることも判明しました。さらに201-F6株のゲノム解析を行ったところ、PETを好んで分解し、PETが頑丈になる常温においても高い分解活性を持つ「PETase」と、PETを加水分解する「MHETase」の2つの酵素を発見しました。これら2つの酵素の働きで、201-F6株は、PETを原料であるテレフタル酸とエチレングリコールに効率よく分解することがわかりました。

 これまで自然界では分解されないと考えられてきたPETですが、今回の研究によりバイオリサイクルに組み込まれる生物的ルートが存在するということになりました。今後、人類が持続可能な社会を作り上げるためには、限りある資源への依存から脱却し、リサイクルを推し進めることが求められています。今回見出された酵素の活性や安定性が強化できれば、エネルギー消費も小さく、環境にも優しい理想的なPETリサイクルの実現が近づくと考えられます。

京都工芸繊維大学

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大学ジャーナルオンライン編集部

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