佐賀大学と京セラメディカル(大阪市)は、共同で開発した抗菌性の高い人工股関節を2016年4月から販売することを発表しました。骨伝導実験や生体内での細菌感染実験などによって、高い抗菌性と骨親和性の両方を兼ね備え、生物学的に安全な抗菌性人工股関節を共同で開発。毒性の低い銀を表面に塗ることで製品に抗菌性を持たせたもので、術後の感染症予防が期待されています。

 関節リウマチなどで傷んだ関節を人工関節(インプラント)に置き換える手術はこの数十年で大きく進歩し、今や国内で年13万件以上行われているものとなっています。しかし一方で術後に起こる感染症も少なからず報告されています。この問題に対処すべく、佐賀大学では2005年以来、人工関節そのものに抗菌性能を付与するための研究を続けていました。

 佐賀大学医学部整形外科の馬渡正明教授は、研究にあたり、多種の細菌に対して高い殺菌作用を発揮し、かつ副反応も低く、耐性菌も発生しにくい素材である銀に着目。もっともその力を発揮できる銀の量やコーティング方法を研究した結果、優れた骨伝導能を有するハイドロキシアパタイト(HA)に酸化銀を含有させ、2700℃の高熱でインプラント表面に微量の銀を吹きつける技術を開発しました。この「銀HA溶射被膜」は人工関節感染の最大の原因菌であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対して強い殺菌作用を発揮し、バイオフィルムの形成を阻害します。さらに20人を対象にした臨床試験では1年半以上経過しても感染症は認められず、血中に溶け出した銀の濃度も1年間にわたり正常範囲内というデータが得られました。高い安全性を示すことができた結果、2015年9月厚生労働省の製造承認が得られ、12月に保険適用が決定。2016年4月、世界に先駆けて日本での販売の運びとなりました。

 今後この人工関節が広く使われることで、感染症がどの程度減ったのかについて、数多くのデータを集積して検証する必要があります。将来的には人工関節だけでなく脊椎インプラントや骨接合材、人工歯根などにこの技術が応用されることが期待されています。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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