名古屋大学の草野完也教授の研究チームは太陽地球圏の環境変動を予測するための全国的な研究プロジェクトを開始しました。過去半世紀、人類は宇宙探査を進めてきました。その領域は太陽系全体に広がりつつあるなかで想像以上に激しく変化する世界であることや、そうした変動が人類社会にも影響を与えていることが分かってきました。

 顕著な例としては太陽表面の爆発があります。太陽表面での爆発(フレア)は時に巨大磁気嵐などの現象を誘発し地球圏の電力、衛星、航空機、通信網などに致命的な影響を及ぼす可能性があることが指摘されています。こうした地球規模の環境変動の発生と影響を正確に予測するいわば宇宙天気予報の基盤を確立することが急務とされています。

 これまで太陽の周期活動およびフレアの発生、それに伴う地球圏の環境変動は経験的な予測に基づいてなされてきました。まずは太陽観測衛星「ひので」や2016年に打ち上げられる地球周辺の観測を行う探査衛星ERGといった日本が世界に誇る最先端のシステムによる観測と先進的なシミュレーションを組み合わせることで、「宇宙の天気」を正確に予測することを目指します。さらに、様々な分野を横断した研究によって「宇宙の天気」が私たちが生活する地球環境や社会システムにどのような影響を与えるのかを予測し、評価する方法を確立していきます。
 この研究によって地球周辺の環境変動の影響が予測できれば、私たちの社会の設計方針にも多大なフィードバックを与えることができるでしょう。現在大雨の際の治水や地震の際の減災を考慮した社会設計が進められていますが、宇宙天気の変動にも強い社会というのが当たり前になる日が来るのかもしれません。

出典:【名古屋大学】太陽地球圏環境の未来予測を通して現代社会の新たな基盤形成を目指す新学術領域研究プロジェクトを開始(PDF)

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