京都大学の神戸大朋 生命科学研究科准教授らの研究グループは、乳児の成長障害などを引き起こす低亜鉛母乳について、その原因となる遺伝的変異の中で、国内で報告のない変異を複数確認したと発表。母乳の亜鉛不足による乳児亜鉛欠乏症が、これまでの予測よりも多く発生していることを示唆するものだ。

 亜鉛は微量ながら生命活動に欠かせないものであり、特に乳児は成長のために大人より多くの亜鉛を必要とする。乳児で亜鉛が欠乏すると皮膚炎や成長障害といった症状を招き、特に早産児や低体重児には深刻な問題となる。
授乳開始直後の母乳には乳児の必要量を満たす亜鉛が含まれているが、この亜鉛量が不足すると乳児は一過性乳児亜鉛欠乏症(TNZD)となり、補充治療を行わなければならない。これまでの研究で、乳腺で母乳に亜鉛を分泌する亜鉛トランスポーターZnT2遺伝子が変異を起こすと、亜鉛量が減少することが分かっているが、症例報告数の少なさから変異の発生率などについては不明だった。

 本研究では、TNZDを発症した母親の血液中のゲノムDNAを解析。その結果、すべての母親でZnT2遺伝子上にそれぞれ異なる、未報告の変異を発見した。さらに培養して解析したところ、発見された遺伝子変異がいずれもZnT2の亜鉛輸送機能を奪い、低亜鉛母乳を引き起こすことを突き止めた。研究の結果から、TNZDを起こす遺伝子変異は、数・種類ともに従来の予想より多いと推測できる。

母乳育児が世界的に推進される中、TNZDの症例はさらに増加することが予想される。研究グループは「日本では低亜鉛母乳による乳児亜鉛欠乏が予測より多く発生している可能性がある」とし、母乳哺育を進めるうえで注意喚起を行うとともに、TNZDを引き起こす遺伝子の変異情報の蓄積・解析を進め、乳児亜鉛欠乏の予防につなげたいとしている。本研究成果は「Pediatric Research」誌に掲載された。

京都大学
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大学ジャーナルオンライン編集部

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