大阪産業大学・井上昭雄准教授、東京大学・田村陽一助教、国立天文台・松尾宏准教授をはじめとする研究チームは、南米チリにある世界最大の電波望遠鏡「アルマ望遠鏡」によって131億光年かなたの銀河で電離酸素の光を発見した。観測史上最も遠方での酸素の発見となり、最初期の宇宙に酸素が存在していたことを証明するものだ。この結果は米科学誌「サイエンス」電子版に発表された。

 138億年前のビッグバン直後に存在した元素は水素とヘリウムがほとんどで、酸素や炭素といった重元素は星の誕生と消滅が繰り返されるうちにできたとされている。宇宙最初期の重元素を探すことは、その時代の星形成の歴史を探ることでもある。さらに星の大集団である銀河がどのようにして生まれたのか、いわゆる「宇宙再電離」が起きたきっかけは何だったのかという謎にも迫るものだ。

 この謎に迫るべく、同研究グループは、星の形成と消滅の積算量を示す酸素の量に着目。スーパーコンピュータで銀河の形成と進化をシミュレーションし、電離酸素輝線の強度を予測。南米チリにの高原にあるアルマ望遠鏡なら、宇宙再電離期の銀河からでも数時間で検出できるという予想論文を発表し、同望遠鏡の観測時間を確保した。

 そして2015年6月、131億光年彼方にある銀河「SXDF-NB1006-2」をターゲットとした観測において電離酸素の光の検出に成功した。これまで最古であった122億年を9億年さかのぼる距離であり、宇宙誕生後の7億年前、最初期の宇宙に酸素が存在していたことを証明する結果だ。

 同チームはさらに133億光年先の銀河の酸素を観測中で、酸素の光のドップラー効果を高解像度で観測することで、銀河のガス運動の理解を進めていく方針だ。今後「宇宙再電離」を引き起こしたのはどんな銀河だったのかを明らかにする重要な手がかりが得られることが期待される。

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