高齢者が重い荷物を運んでいるのを見て、手伝おうと思うときに脳のどこが反応しているのか。早稲田大学スポーツ科学学術院の彼末一之教授らのグループは、「他者の頑張り」を理解して活動する脳の領域を明らかにした。

 他者の行動を理解することは社会生活に重要だが、それに関わる神経回路は2つあるという。1つは他者の行動の「意図・目的」を理解するための神経基盤。これまでの研究では、物をつかむために手を伸ばす動作などの映像を見せて脳活動を解析していた。もう1つは他者の「感情」を理解するための神経基盤。これには人の笑顔などの映像を見せていた。これまでは、このように2種の研究で異なる映像を用いていたため、「動作」から「感情」を読み取る神経基盤の研究はほとんどなかったという。

 今回、他者の努力度の理解に関連する脳領域を特定するために、行為者の頑張りが異なる映像を被験者に見せた。細身の人と体格の良い人がそれぞれ重いダンベルと軽いダンベルを持ち上げる動作(アームカール)の映像だ。これにより、被験者が映像を見て、あのダンベルは重いという認識ではなく、あの人は頑張っているという認識に関わる脳活動を読み取ろうとしたという。

 脳活動を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で計測した結果、行為者が努力を要する動作の映像を観察した際には脳の右側の側頭頭頂接合部が特異的に活動することが判明。動作の意図・目的の理解に関する領域とは異なっていた。

 今後は同じ映像を見たときに個人差が生じるメカニズムの検討が課題という。今回の成果により、スポーツ観戦による感動や共感メカニズムの解明、コミュニケーション能力を向上させる方法の開発などが期待される。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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