国の安全保障に役立つ技術開発を進めるため、防衛省が公募していた軍事利用目的の研究費支給先に、東京農工大学、東京理科大学など10件が選ばれた。大学や民間企業、研究機関から44件の応募があり、4倍強の狭き門となった。今秋に契約し、研究に入る。

 防衛装備庁によると、支給が決まったのは大学5件、民間企業2件、研究機関3件。
主な研究内容は以下のとおり。
■吸着能と加水分解反応に対する触媒活性を持つ多孔性ナノ粒子集合体(大阪市立大学)
■軽量かつ環境低負荷な熱電材料によるフェイルセーフ熱電池の開発(東京理科大学)
■超多自由度メッシュロボットによる触覚/力覚提示(東京農工大学)
■艦船の摩擦抵抗低減効果のメカニズム解明(北海道大学)
■超高温、高圧処理による金属表面の耐久性向上(山口東京理科大学)
■水中で空気層を保持できる塗膜による水中移動体の摩擦抵抗低減(物質・材料研究機構)
■海中で効率的かつ実用的な電磁波通信を可能とするアンテナの開発(日本電気)

 研究費は「安全保障技術研究推進制度」。防衛省が3~5月に公募した。研究期間は3年以内で、1件当たり年間1,000~3,000万円の直接経費を上限として支給する。さらに、直接経費の30%に当たる間接経費も別に支給する。成果は公開され、研究者は特許を取得して民生用に活用できる。

 安倍政権は武器輸出三原則を撤廃し、海外との武器の共同開発や輸出に本腰を入れている。安全保障技術研究推進制度は2015年からスタートしたが、大学は戦後、軍事研究と一線を画してきた経緯がある。このため、大学の中には軍事利用を目的とした研究費への応募に異論が少なくない。

参考:【防衛装備庁】平成28年度新規採択研究課題

大学ジャーナルオンライン編集部

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