首都大学東京大学院 都市環境科学研究科の沼田真也准教授を代表とする高度研究プロジェクトは、東京都の福祉保健局のデータを用いて、東京都の屋外害虫に関する相談件数が近年増加傾向にあり、ハチやヘビなどの相談件数と緑地面積には関連があることを明らかにした。

 近年、都市政策において生物多様性に関する取組みの重要性が高まっている一方、生物多様性が必ずしも人間生活にとって“正の効果”だけでなく、害獣や害虫の増加など“負の効果”も与えうることが指摘されている。しかし、この都市緑地が害獣・害虫の種類や数にどのような影響を与えるかはこれまで分かっていなかった。

 高度研究プロジェクトでは、過去20年間に東京都の各市区町村などに寄せられた80種類以上の害虫・害獣に関する相談件数データと緑地面積データとの比較解析を行い、その結果、スズメバチやヘビ、マダニなど屋外害虫の一部については、緑地面積との間に正の相関が見られたという。

 また、屋外害虫に関する相談件数は近年増加傾向にあり、特にハチなどの刺咬昆虫は、ネズミを抜き、全相談件数の約半数を占める害虫であることが明らかになった。

 今回の研究で、都市緑地は都市の生物多様性を保全する上で重要であるものの、都市緑地の増加は一部の害虫・害獣と人間生活との軋轢を深刻化させる可能性が示される結果となった。

 一方で、屋外害虫に関する相談件数の増加は、屋外害虫数の増加だけでなく、生物に慣れていない都市住民が過敏に反応している結果を反映している可能性もあるという。例えば、スズメバチの被害や毒性に関する過大な報道などは、都市住民の過敏な反応を助長している可能性があるという。都市において自然環境との共存を実現するためには、人間たちが生物多様性のもつ正負の効果を理解し、過敏になりすぎないことも重要だという。

今回の研究成果は、2016年8月2日、”Nature”グループのオンライン科学誌”Scientific Reports”に掲載された。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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