東京女子医科大学はポート株式会社と共同で、都市部での医療受診の利便性向上に向け、IoT(モノのインターネット)を活用した「都市型遠隔診療」の効果実証研究を行うことになった。

 長期間にわたって通院し治療を受け続けなければならない生活習慣病患者。利便性の高い都市部でも、混雑した公共交通機関の利用や時間的な負担は大きい。そんなわずらわしさを解消できるのではと期待されているのが、情報通信技術を利用した、医師との対面診察を必要としない遠隔診療。しかし、日本での遠隔診療はいまだ一般的でなく、その安全性や効果について大規模な検討はなされていないのが現状だ。

 今回、東京女子医科大学がポート株式会社と共同で取り組む臨床試験は、IoTを活用した非対面型の遠隔診療による高血圧治療が、従来型の診療に劣らないこと、もしくは優れることを証明することが目的。具体的には、非対面型遠隔診療が従来型の診療と同じくらい安全かどうか、より良い血圧コントロールが得られるかどうか、医療経済上も効率的かどうかを検証する。

 臨床試験の対象となるのは、20歳以上の本態性高血圧症患者。遠隔診療の流れは、まず、患者が、オムロン自動血圧計HEM-9200T※を用いて自己血圧測定を週3回以上実施し、自己所有のスマートフォン等を介して測定データを随時サーバーに送信する。担当医は定期的に家庭血圧データを参照して治療方針を決定。その後、担当医は電話に加え必要に応じてチャットやメールなどの通信手段を用いて所見と治療方針を患者に伝え、患者との意思確認をもって内服薬を処方。処方された内服薬は患者の自宅に郵送される。

 今回行われるネットワーク血圧計を活用した遠隔診療の臨床試験で、患者の血圧がより精密に判断され、安全かつ良好にコントロールされることが証明できれば、心血管病の予防はもちろん、通院や診察の待ち時間が不要となり患者の仕事や生活の効率向上、医療費の節約などにつながると期待が寄せられている。

※オムロン自動血圧計HEM-9200Tは、測定データをポートメディカル血圧管理アプリに転送し管理することができる。

東京女子医科大学

大学ジャーナルオンライン編集部

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