ALで大切なことは、いかに受講生が新たな課題に直面し、その課題を克服するために能動的に努力できるのかということに尽きる(図表4)。その際、教員の果たすべき役割は、受講生自身が気づいていない課題・問題を指摘し、それを解決するための手助けを行うことであるだろう。

図表4:ALにおける課題解決型学修プロセス バサンティ・マジュンダ 竹尾恵子 (2004)『PBLのすすめ』(学研マーケティング)を元に筆者作成

図表4:ALにおける課題解決型学修プロセス
バサンティ・マジュンダ 竹尾恵子 (2004)『PBLのすすめ』(学研マーケティング)を元に筆者作成

では、特に産学連携型のALにおいて、大学生たちはどのような課題に直面するのだろうか。筆者の経験上、この回答は無数といって良いほどに存在する。例えば提案する企画のアイデアの良し悪しが問題になることもあるし、その提案の根拠づけが巧くいかずに苦労することもあるだろう。チーム単位で活動をする場合、互いに意見をぶつけ合うことができなかったり、チーム内でのモチベーションが高まらないままに終わってしまうこともあるかもしれない。もっと初歩的なところでいうなら、タイムマネジメントができなかったり、スケジュール管理が不十分なチームもある。メールを送る時の作法を知らなかったり、プレゼンテクニックを身につけていない参加者もいるだろう。高度なものでいうと、目標設定が思うようにできなかったり、取捨選択や優先順位づけについて悩む時もある。大学生の場合、自分で言っていることと実際の行動が一致していないことなどざらであるし、少し困難に直面すると途端に諦めてしまう者もいる。

こういった課題・問題に受講者をいかに直面させるか、また、それを克服するためのヒントを与え、受講者にどれだけの努力を払わせることができるかが、ALでは重要なのである。その結果、受講者自身が自らの課題を自身の力で見つけることができるようになれば、ALは大成功といえるだろう。

単なる知識の伝授であれば一方向の受動的講義スタイルで済むところを課題発見・解決型のALにするには、教員自身の主体的・能動的関わりも欠かせない。実際、筆者も上記の産学連携型ALを行うために、毎日平均20~30通以上のメールのやりとりが必要になることも多々ある。このことからも、アクティブラーニングによる課題解決型産学連携講義を成功させるためには、指導者自身がいかに性根を据えて学生の課題を指摘し、それを克服するための指導ができるかにかかっているといえるだろう。

参考:坂田教授のプロジェクト内容などはこちら⇒ 中京大学総合政策学部坂田隆文ゼミホームページ

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坂田 隆文

中京大学総合政策学部教授、博士(商学)、中京大学教育推進センター委員会能動的学修推進部会部会長。名古屋大学、名古屋市立大学、金城学院大学非常勤講師。マーケティング戦略論、流通論、商品企画論を主な専門とし、「面白さ」と「わかりやすさ」と「有益さ」という3つを重視した講義・研修で定評がある。近著に『1からのマーケティング・デザイン』(共編著、碩学舎)、『1からの商品企画』(共著、碩学舎)がある。近年では名古屋で若手企業人を集めた異業種交流勉強会を主宰するなど、活動の場を広げている。詳細は担当ゼミHP(http://www.sakataseminar.jp/)にて。