【1】日本の高等教育機関の現状

 日本の大学淘汰に向けた外的環境の変化を整理していくうえで、便宜上、日本の高等教育機関(大学院を除く)を以下に分類する。(平成27年の学校数、在学生数、在学生シェア)

1:国立大学(86校、61.1万人、16.5%)
2:公立大学(89校、14.9万人、4.0%)
3:私立大学(604校、210.1万人、56.7%)
4:短期大学(346校、13.3万人、3.6%)
5:高等専門学校(57校、5.8万人、1.6%)
6:専修学校(3,201校、65.6万人、17.7%)

 各高等教育機関のポジショニング・マップを作成するために、学力と学費と在学生総数を指標とした図1を作成した。

 図表1の座標軸の縦軸(Y軸)は入学時点の学力レベルを、横軸(X軸)は学費とした。学費は、入学金、授業料、施設設備費など諸経費の就学期間での総額とした。(高等専門学校は4年次、5年次とした。)

 上記に分類した高等教育機関ごとの学費の平均値をY軸にプロットし、大学においては入学偏差値の数値を参考とし、短大・専門学校・高等専門学校については、おおよその入学の学力分布のイメージをX軸にプロットし、バブルの大きさは、在学生総数とした。

図表1 日本の高等教育機関の分布イメージ

図表1 日本の高等教育機関の分布イメージ

 

 図表1から日本の高等教育機関の在学生分布をみると、最も高額な学費が必要な私立大学の在学生シェアが56.7%、次いで国公立大学20.5%、大学計で77.2%のシェアを占めている。一方、2~3年間の在学期間であるため学費が少ない短期大学、専修学校、高等専門学校は、22.9%でその多くは専修学校が占めていることが分かる。

 これまでの高等教育機関への進学希望者は、学費負担が少なく入学難易度が高い国公立大学を目指し勉強してきた。私立大学の進学希望者も同様に上位層の大学進学を目指してきた。その理由は、「勉強し知識を習得すれば、いい大学に入学でき、いい就職ができ、安定した人生が約束される」という高度成長時代に生まれた神話がいまだ主流の考え方として残っているからだ。最新の高校生を対象とした調査では、さらにその傾向が強まっている。

 反面、就学意欲は高いが経済的な事情で4年間も高額な学費が負担できない家庭も国内には多数存在するのも事実である。また、明確な職業に対する目的意識を持つ高校生にとって、2年間から3年間の短期間で就職に直接つながる専修学校、短期大学や高等専門学校の存在価値は高いものがある。

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寺裏 誠司

・株式会社学び 代表取締役社長
・一般社団法人アクティブ・ラーニング協会 理事
・リクルート進学総研 客員研究員
これまで、コンサルティング支援した大学・短大・専門学校は250校以上、支援高校2,500校の実績。講演・セミナー・研修・大学非常勤講師など200件、対象3万人以上の実績を有する。
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