前号の最後の山極総長の質問に対して、ご出席の校長先生方から寄せられた、大学入試改革、高校、大学それぞれにおける教育改革、高大接続の在り方等についてのご意見を一挙にご紹介します。

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京都大学総長と首都圏進学校校長座談会 第1回 〜大学と高校の対話を始めよう〜

 
高大接続システム改革会議中間まとめによる新テストについて

鈴木政男校長先生(千葉県立千葉高校)

1.「高等学校基礎学力テスト」(仮称)について

実施の目的は、高校教育の質保証を国が統一試験で行おうということではなく、高校生の学力を「測定・評価」し、その結果をもとに教育の「改善」を図る、「改善」することで「質保証」につなげたいというところにあると考えています。言い換えれば、学習意欲のない者に意欲を持たせたいという、「目標・願望」です。これは、国や教育委員会、学校の願望で、全ての生徒・保護者が共有しているわけではありませんから、「有償」で実施するのは、難しいと言わざるを得ません。商業高校などで行う検定、あるいは民間の検定試験と同列に、多様な評価の一つとして導入するとしていますが、もともと意欲を持って受けにくる「検定試験と同様に」と言われても、画に描いた餅です。
本当の意味での「質保証」なら、生徒・保護者も希望せざるを得ないので「有償」にできると思います。授業料に含めるというような形でもいいかもしれません。

 もうひとつの目的は、この生徒はこれくらいの「評価」だということを示す、つまり、「評価結果の保証」だと考えます。「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)も、この目的は同じです。そして、この評価結果をもとに、大学、専門学校などの進学先や就職先が決定されていくとなれば、生徒・保護者は必死になって、有償でも希望します。

この「改善」と「評価結果の保証」を1つのテストで行おうとするところから無理が生じてきます。「改善」ならば、受検者の上位層(高校生全体の上位層ではなく)はあまり気にする必要がなく、中位から低位層の力の差が測れるように下の幅が広い問題としなければなりません。また「評価」となれば、上位を合否に振り分けなければならないので、上の幅が広い問題が必要になります。この両方が新テストには同時に求められていますから、CBT-IRTが整わなければ、なかなか実現できないと思います。

「改善」という趣旨から考えると、1年次の必履修科目をターゲットに2年次3年次で実施するということに疑問を感じます。結果を見て、学校・教委として次年度以降の生徒に対する方針をたてるための元データにすることはできますが、受検した個々の生徒の改善をどう図るのか。本人任せにするのか、既に単位を修得して現に履修していない科目についての指導を、学校としてどういう体制で行えばいいのか。簿記も英検も、なかばボランティアで教員による指導が行われていますが、どちらも生徒にとっては新しいこと、新しい能力を身につけることへのチャレンジです。しかし、基礎学力テストについては、進路指導の一環、つまり進学や就職を左右する指標として用いられるのならともかく、修得済みの科目の補習は教員も生徒も意欲がわきません。社会で自立し、社会に参画・貢献していくために必要な基礎学力を確実に身に付ける、という目標は正しいけれど、結果がともなうようには思えません。

「評価」という趣旨から考えると、まず、就職試験において。基礎学力テストの結果だけをもって合否を決めないよう、とありますが、企業としては当然のことだと思います。企業・職種毎に求められる最低限の学力が確認できれば、あとは人物評価なり適性検査なりで決めることになるでしょう。高校に学力差のあることは当然わかっているので、高校が作成した成績評価ではなく独自の試験で確認します。企業が求める最低限の学力と、基礎学力テストの評価が一致するのであればそのまま利用することもあるでしょうが、多くは基礎学力テストを利用せず、独自のペーパー試験を課すことになると思います。
大学入試では、選抜性の低い大学の入試が念頭に置かれているようですが、そのような大学は、基礎学力テストが0点でも入学させる可能性もあり、このテストの評価結果を選抜の大きな要素としません。選抜制の高い大学はそもそもこのテストを利用しません。AO・推薦入試であっても同じです。すると、高校生の約半分が進学し、その上半分は選抜性が高く、そこからAO・推薦でも抜けて、残りの下半分のうち相当数は評価をあまり重要視されないことになるので、このテストを活用した選抜の対象になる高校生は、全体の10%にも満たないのではないかと想像します。結局、「評価」としてあまり利用されない気がします。

 

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京都大学

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大学ジャーナル編集部

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