日本の大学が生き残るために必要な4つの改革の方向性とは。

前編はこちら→日本の大学が晒されている外圧と若者の現状

【3】国内における日本の大学の4つの可能性

  図表1で見てきたように、国内の高等教育機関は、今後様々な方向の外圧で四面楚歌の状態になると考えられる。日本の大学改革はどの方向に向かえばよいのだろうか?

 図表3は、日本の高等教育機関が国内の18歳を対象として運営を行う際に、3つの外圧から生き残るために、どんな可能性があるかということを座標空間化したものである。
 ◆ Y軸は、自らアウトカム(学修成果)を高めようとする意欲(モチベーション)
 ◆ X軸は、学費
 ◆ Z軸は、投資対アウトカム 
とした。

 全ての象限に位置する高等教育機関が世界の大学に対峙し生き残るためには、投資対アウトカム(Z軸)を最大化できなければ存在価値がなくなるという前提である。

 投資対アウトカムとは、学修成果/学費とする。学費が少ないほど、学修成果が高いほど良いとする指標だ。学修成果(アウトカム)は、人間力、生きる力、社会人基礎力、学士力などで表現されている知識・専門技能に加え、世の中がどう変化しても社会で生涯活躍できる力とした。

 Y軸に、自らアウトカムを高めようとする意欲という軸を置いたのは、先に述べた現状の日本の高校生の意識を考慮してのことだ。主体的、能動的に学修へのモチベーションが高い高校生とそうではない高校生が存在するのが現実だからだ。

図表3 日本の高等教育機関の可能性(国内18歳対象)

図表3 日本の高等教育機関の可能性(国内18歳対象)

<第Ⅰ象限>リアル型大学の可能性
 第Ⅰ象限は、自らアウトカムを高める意欲が高い高校生を対象とし、高額な学費を徴収し投資対アウトカムを最大化することを目的とするリアル型大学の可能性だ。
 外圧となる競合大学は、欧米諸国やアジア、アフリカなど新興国のトップクラスの大学である。ハイブリッド型大学(リアル授業はVRで海外のキャンパスに行く機会は少ない)などの競合出現が想定される。
 世界の競合大学と明らかに差別化されたアウトカムを構築し、インバウンドとしての留学生をも惹きつけるような魅力をいかに生み出せるかがポイントである。日本でしか学べない内容、日本独自の技術、特定分野の世界最高峰の研究が武器になる。また、日本の歴史・文化を背景とした日本に住み、学べるからこその価値づけができる分野については優位性が担保できるだろう。国が投資(競争的助成金)を集中した少数の大学が国内に残ることとなる。
 また、東京工業大学の改革に象徴されるように(研究力のさらなる強化に向けて「科学技術創成研究院」設置)、国内の研究の中枢となり独自分野に限った研究者の養成所としての価値も残されるだろう。世界を惹きつける分野に選択・集中していくことが国内で生き残る可能性を高めていく。

<第Ⅱ象限>オンライン型大学の可能性
 第Ⅱ象限は、自らアウトカムを高める意欲が高い高校生を対象とし、学費が低額で投資対アウトカムを最大化することを目的とする人工知能活用のオンライン型大学の可能性だ。
 外圧となる競合大学は、欧米諸国やアジア、アフリカなど新興国の財政力が豊かで先端技術を駆使するオンライン大学である。日本に居ながら言語と距離の壁を越えて高投資対アウトカムのディプロマ取得が可能な競合大学だ。意欲が高い高校生が対象のため、世界の競合大学と優位な差別化された魅力がなければ、国内のオンライン型の大学に留まることはないだろう。
 第Ⅰ象限と同様に日本でしか学べない内容、日本独自の技術、特定分野の教育の中身が武器になる。また、国内だからこそのオフライン交流、実践型・体感型教育、インターンシップなどの施策に魅力づけをする必要があるだろう。また、国外の大学あるいは企業に負けない人工知能を活用した最先端の教育システムの開発力が問われるだろう。
 オンラインだからこその在学生数の最大化はもちろんのこと、さらに学費を最小化する経営手法も必要となる。専任教員数は大学設置基準の最低数とし人件費を最小化し、産業界の実務者を大学の非常勤講師として積極的に活用することでアウトカムを高めつつ人件費を圧縮する工夫も必要だ。また、オンライン学習システムの効率化、寄付などの資金の調達の活性化、オンライン学習技術の継続的開発などの経営努力が欠かせない。

 

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寺裏 誠司

寺裏 誠司

・株式会社学び 代表取締役社長

・一般社団法人アクティブ・ラーニング協会 理事

・リクルート進学総研 客員研究員

これまで、コンサルティング支援した大学・短大・専門学校は250校以上、支援高校2,500校の実績。講演・セミナー・研修・大学非常勤講師など200件、対象3万人以上の実績を有する。

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