2009年11月19日に始まり、通算9回目となった本座談会。この間、秋入学に始まり、大学入試改革についての議論も加速しました。今回の大学入試制度改革には、いくつかの伏線と様々な背景、要因が考えられますが、その一つに、若者の間に広がる過度に正解を求めたり、決められたレールの上を進むことを良しとするようなマインドに対する、産業界や大学の危機感があったことは否めません。

大学入試改革にどこまでインパクトがあるかはともかく、高大接続、記述式、多面的・総合的評価などのキーワードは、この文脈の中に置くことで初めて意味を持ちます。今回はグローバル社会の中を逞しく生きていくのに欠かせない「失敗を恐れず挑戦する心」、「挑む心」を育むために、大学は、高校は何を課題としてその解決にどのように取り組んでいるのかを軸に話し合っていただきました。(10月12日学士会館にて)

 

京都大学のこの1年

 
山極:大学は今、様々な改革を加速させていますが、その柱は、国際化、産学連携、自律的な資金の確保の三つです。国際化は教育面では学生のモビリティを高めることが目的です。京都大学でも100を超える大学と大学間学生交流協定を結び、単位互換の仕組みなどを整備することにより、一旦は京都大学に入りそこから海外へチャレンジするという選択肢を用意しています。

様々な留学の形があってもいいということで、『おもろチャレンジ』(京都大学体験型海外渡航支援制度―鼎会かなえかいプログラム)を昨年から始めています。期間は3週間以上で、行先は大学に限りません。学生自身で企画し、行先の選定、事前交渉など全て自分でやってもらいます。30件を目途に、審査に通れば上限30万円を支援します。昨年は115名の応募の中から31件採用しましたが、行先にはアフリカなども含まれています。今年は昨年より多い143件の応募があり、予想より学部生が増え、しかも女子が多くなっています。

一昨年から開始した『学生チャレンジコンテスト』は、学生自身が活動計画を立てて、それがおもろかったらwebに掲載し、一般の方々からクラウドファンディングで資金を集めるというものです。他に「学際研究着想コンテスト」というのもやっています。高校生に大学からのメッセージを伝えるのも非常に重要であり、毎年、高校生に模擬授業を提供する『サマースクール』を、また都道府県の教育委員会等との提携による『サイエンスフェスティバル』も行っています。

サイエンスフェスティバルでは、選ばれた高校生のチームには京都大学に来てもらい、発表して競ってもらいますが、高校生とは思えないようなアイデア、取組もあります。理学部から始まった『ELCAS』では、本学の教員が月二回、週末に高校生たちへ大学と同じような内容の講義や実験・指導を行っています。講義・実習を行う基盤コース19分野に135名、研究室に配属され少人数制で実験・実習を行う専修コースに18分野28名が参加しています。また、今年度からは分野を人文系にも広げています。

特色入試は、当初ハードルが高いのではと避けられる傾向もありましたが、熱意があれば、能力以外の要素も選考の対象になると説明を続け、徐々に高校や高校生の理解が広がってきたと実感しています。入学してきた学生がどれぐらい伸びるか、大いに期待していますし、今後さらに枠を広げていきたいと思っています。

産学連携では、日本の指定国立大学法人制度の最初の3大学に選ばれました。自然科学分野だけではなく、人文社会科学の牽引者となることが期待されているというのが意外でしたが、元々京都学派と言われるベースがありますから、きちんと人文社会科学系の学問から立て直し、それを国際的に発信していく核を作りたいと考えています。

その一環として掲げたのが、『吉田カレッジ構想』で、日本語で講義やセミナーを受けられる留学生を募ります。また、優秀な学部学生を海外から募り、日本人学生と混住する寮を現在建設中です。現在、大学院生中心に2,200人ぐらいの留学生を、数年のうちに4,000人以上にしようという計画です。その他、リカレント教育として、京都の文化芸術系の国公私立9大学と組んで10大学で、『京都アカデミアフォーラム』を立ち上げ、この秋には東京丸の内に専用のオフィスを開設しました。

京都大学総長 山極 壽一 先生

京都大学総長 山極 壽一 先生

 

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京都大学

「自重自敬」の精神に基づき自由な学風を育み、創造的な学問の世界を切り開く。

自学自習をモットーに、常識にとらわれない自由の学風を守り続け、創造力と実践力を兼ね備えた人材を育てます。 学生自身が価値のある試行錯誤を経て、確かな未来を選択できるよう、多様性と階層性のある、様々な選択肢を許容するような、包容力の持った学習の場を提供します。[…]

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大学ジャーナルオンライン編集部

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