挑む心をどう育むか―参加校は今

 
杉山:今年も16人京大にお世話になりました。『吉田カレッジ構想』など、京大のグローバル化は着実に進んでいると感じました。今日のテーマでもある、チャレンジする若者を増やすために、大学もいろんな仕掛けをしていると感じると同時に、高校では、まだまだそれが大きな課題として残っているのではないかという気がしています。

全般的な印象では、今の生徒には失敗することを恐れたり、安定志向に走ったりする気質がありますが、それは保護者にもあると思います。それを打破するにはいろんな仕掛けが必要ですが、本校は男子校ということで、「無理難題に挑戦しろ」と様々な取組を行っています。その一つが50キロを7時間で歩く古河強歩大会。こういう取組に仲間と一緒に挑む中で次第にチャレンジするマインドが育ってきます。

また一年中、スポーツ大会をしています。クラスマッチで教員チームも必ず入りますが、とても強く、自分たちを乗り越えてこいとばかりに盾になっています。このように教員が矜持を示すことも大事です。学校として様々な仕掛けを作り、その上で保護者の意識も変えるよう働きかけることが大事だと考えています。

杉山 剛士 校長先生(埼玉県立浦和高等学校)

杉山 剛士 校長先生(埼玉県立浦和高等学校)


 
稲垣:3年生の京大への志望は増えていて、来年度も20名弱は受けてくれると思っています。進路選択には、先輩たちが戻ってきて話をしてくれるのがとてもいい刺激になりますが、京大生は研究系の話や、興味のあることをいろいろやっていくのが面白いという話をします。今日もまた『おもろチャレンジ』のお話をお聞きして、学生にすべて自分たちで考えさせるという考え方を、大学で取り入れてくれているとのことで、高校側としては非常にありがたいと思っています。

本校の体育祭も生徒だけで作り上げていく一大プロジェクトです。3年生が、2年のこの時期に引き継いで一年間かけて生徒だけで作り上げていく。引継ぎのための膨大なマニュアルにも見るべきものがあります。生徒だけで作り上げていくことで、見えない力の育成に大きく寄与していると考えています。それがあるからこそ、体育祭が終わると急きょギアを入れ変えて受験勉強に臨みます。

校長としては、失敗を恐れる子たちが少し増えてきているように感じていますから、ハードルをもう一歩越えるために何を仕掛けていくか、それがこれから非常に重要になってくると思っています。

稲垣 一郎 校長先生(神奈川県立湘南高等学校)

稲垣 一郎 校長先生(神奈川県立湘南高等学校)


 
吉野:今の子どもたちには失敗を恐れ、親が敷いたレールの上を素直に進む子が本当に多い。下手するとそのまま真っすぐ、周りを見ないまま、失敗しないままで大人になってしまう場合もある。そこで15年ほど前から、思春期の前半に当たる中学3年間では、家庭でやるべきさまざまな後押しを、生徒指導、生活指導として学校でも援助しようということになり、今ようやく軌道に乗ってきたところです。

具体的には、まず3日に一回、席替えします。いろいろな価値観を持つ子とぶつかりあい、親から与えられた自分の価値観だけが正しいのではないことに気づかせ、それを乗り越えて価値観の違う他者と一緒に行動できるような環境を作ることで、チャレンジしながら失敗を恐れない子に育ってほしい。またアサーション(自己表現)トレーニングも取り入れていて、コミュニケーション能力を高めることで、クラスを越え、学年を越え、学校を越え、さらには国境を越え、文化・歴史観の違う国の人と、明日の平和な世界を一緒に作っていく能力が育つのではないかと期待しています。

本校の考えるグローバル化とは、国際競争に負けてしまうから頑張れと言うのではなく、価値観の異なる隣の子と一緒に行動できる資質を伸ばし、世界の中で活躍できるように自分の枠を外に広げていくこと、一歩踏み出してチャレンジできる素養を育てていくことだと考えています。これは、入学段階で「もう少しチャレンジしておけば良かった」などと考えている生徒の意識変革にもつながると思います。

吉野 明 校長先生(鷗友学園女子高等学校)

吉野 明 校長先生(鷗友学園女子高等学校)

 

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京都大学

「自重自敬」の精神に基づき自由な学風を育み、創造的な学問の世界を切り開く。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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