ロボカップ2017名古屋世界大会(7月26日~30日、於:名古屋市港区のポートメッセ名古屋・武田テバオーシャンアリーナ)に併催された知能ロボット競技大会、「第3回アマゾン・ロボティクス・チャレンジ」で、中京大学(知的センシング研究室)は三菱電機株式会社(先端技術総合研究所)等との合同チーム(チーム名:MC2)で出場し、「Stow task」(商品を棚に収納する動作)部門で世界3位、日本勢ではトップとなりました。中京大学から参加したのは工学部機械システム工学科・橋本研究室の学生・院生の20人。橋本先生に、好成績の要因と、AI、ロボット時代に向けた高度エンジニアの養成について、産学連携教育などをキーワードにお聞きしました。

次世代エンジニア育成のために

アマゾン・ロボティクス・チャレンジに参加する意義

 今年の第3回アマゾン・ロボティクス・チャレンジには、世界各地から約30 チームが応募し、その中から予選を勝ち抜いた16 チームが名古屋に集まり、それぞれが考案したユニークな人工知能ロボットで、「Pick task」(商品を棚から取り出して箱に入れる動作)と、「Stow task」を競いました。海外からは、マサチューセッツ工科大、プリンストン大、カーネギーメロン大、ボン大学などが、日本からは、東京大、奈良先端科学技術大学院大、鳥取大学が参加しました。私たちのチームのこれまでの成績は、第1回アメリカ大会が「Pick task」部門で6位(この時は「Stow task」部門がなく、大会名もアマゾン・ピッキング・チャレンジ)。ドイツのライプツィヒで行われた第2回では、「Pick task」部門で8位(この時から「Stow task」部門も開設)でした。この大会には、研究上、教育上の2 つの点で大きな効果があると考えています。まず研究面では、参加学生たちが、人工知能とロボットの世界レベルの最先端技術を開発することです。この大会で上位に食い込むためには、深層学習を用いた物体識別や、3 次元物体認識など、その時点で最高レベルの高度な人工知能技術を開発していく必要があります。その結果、それらの技術は研究論文にまとめられて国内外の学会などで発表できるレベルになります。また教育面では、この大会が、学生たちのモティベーションアップと視野を広げることに大きく寄与していることです。本研究室からも、応援団も含めると30 人以上の学生がこのイベントに出場し、同じ目標をもって挑戦している世界中の学生たちと交流しました。これは世界視野をもつエンジニアを目指す学生たちにとっては、たいへん大きな財産となります。

 

次世代エンジニアに求められる力

 次世代エンジニアに求められる力は4 つです。その中で最も大切なのは、我が国が強みとするものづくりに関する「技術力」です。特に強調したいのは、ハードウエアもソフトで作り、創薬にもAI やロボットが係わる今、その価値を最大限に活かすための高度な情報技術やシステム技術を駆使する力が重要であるということです。また、システムが複雑化・巨大化してくると、チームを超えて、場合によっては他社と横の連携を図らなければならないことから、核となる要素技術に加えて、システム全体を設計する力(グランドデザイン力)が必須となります。

 二つ目は「即戦力」。ただしこれは、アプリを使いこなすなどの「すぐに使える技術」という狭い意味ではなく、世界や社会の情勢がどのように変化しても《自分なら必ず問題解決できる》という強い自信の根拠、源泉となる力のことです。具体的には、基礎数学、物理、化学などの基礎的な力や、論理力や問題分析力、文章読解・構成力のようなすべての分野・領域に共通する基礎スキル、さらには粘り強さや集中力のような資質です。

 三つ目は芯(心の内部)に世界視野を持ち、何事もグローバルに考えることができる能力です。すべての産業において、大手企業に限らず、グローバル経営が不可欠になっている今、英語が話せるというスキル以上に、何を考えるにしても、常に世界を見据えて考えるという自然な価値観を養うことが大事です。

 四つ目は、挑戦そのものを恐れないこと。挑戦しなければ失敗はしませんが、成功もしません。どちらの経験もなければエンジニアとしての成長は望めません。産業界が求めるのは、失敗しない人材ではなく、挑戦する人材。「挑戦しないこと」は、失敗しないという安心感と引き替えに、成長の好機を自ら放棄しているということに気づかなければなりません。

 

工学部および機械システム工学科・橋本研究室の人材育成方針と取組み

 中京大学工学部は《ものづくり学術交流拠点》と位置付ける名古屋キャンパスと、《IT 産学連携拠点》と位置付ける豊田キャンパスに4学科(機械システム工学科、電気電子工学科、情報工学科、メディア工学科)を展開。Wコア連携と呼ぶ独自の仕組みで、即戦力、適応力、基礎力の養成を通じて、《次世代に活躍できる工学人材の育成》を目指しています。カリキュラムの特徴を一言でいうと、体験重視の実習系科目と、分野を問わず応用可能な理論を学ぶ座学とが協調する初年次教育、さらに早めの研究室所属(2年後期から3年にかけて)による「日々の研究活動を通じた教育」にあります。また中京大学は11 の学部を有する総合大学です。このスケールメリットや充実した施設を使って、他学部の学生と連携して研究を行ったり、日常的に交流することで、幅広い視野を養うこともできます。

 こうした恵まれた環境をベースに、本研究室では、企業から高く評価される人材を育成するために、3 つの独自の仕組みを設けています。

 一つ目は「物事に挑戦する機運を作り上げるための仕組み」。研究室内独自のコンテストや、他大学との共同研究、学外コンテストなどに挑戦し、他者から評価を受ける機会をたくさん設定しています。学生たちは、挑戦すればよい結果を生むこともそうでないこともある、成功にも失敗にも明確な理由がある、負けたときでもがんばれば次に勝てることがあるということを学び、徐々に挑戦を恐れなくなります。

 二つ目は「過去、現在、未来の《つながり》を感じさせるための仕組み」です。研究室では、配属が決まった時点から多くの自主課題を課します。個々の学生に合った適切な難度の、「がんばれば解ける」レベルの課題を設定し、振り返りの機会を増やすことで、学生自身が自分の成長を確認する機会を多く与えます。これにより、学生たちはまず「過去の行動と現在の自分」がつながっていることを意識し始め、「努力力」(努力する力)の大切さを知ることになります。それらはやがて、「現在のがんばりが未来の自分を作っていくに違いない」「なりたい自分になるためには奇跡に期待してはいけない」などの確信に変わっていくのです。

 三つ目は、「社会との接点を持つための仕組み」です。今回のような大会や卒業研究以外にも、学生のほぼ全員が、工学部が支援する学生主体のプロジェクト、国内外の学会発表、企業や公的機関と行う研究プロジェクトなどにも積極的に参加しています。企業を経験した者からすると、学生を大学という小さな世界の中だけで育てるのはとても難しい。そこで自分たちと異なる価値観を持つ企業人に触れたり、他大学の同年代の学生たちの存在を実感したりすることで、大学や研究室は実は広い世界の中のほんの一部の組織体に過ぎないことを自覚してもらうことが必要です。自分を常に広い視野でポジショニングする、このことは、グローバル時代のエンジニアに欠かせないことなのです。

中京大学工学部
学部長
橋本 学 先生
大阪府立住吉高等学校出身。
1985年大阪大学工学部溶接工学科卒。
1987年大阪大学大学院工学研究科修了。
同年三菱電機(株)入社。生産技術研究所 先端技術総合研究所に勤務。
2008年中京大学情報理工学部教授。
2013年中京大学工学部教授。2017年中京大学工学部学部長。
専門は画像情報処理、知能ロボティクス。

 

中京大学

深い知識と幅広い教養を兼ね備えた人材を育成。多彩な個性が集結する11学部18学科の総合大学

11学部18学科を擁する全国有数の総合大学。年間600名以上の海外留学生、就職率97.6%、過去5年間全公務員試験合格者数2,700名以上など高い実績を誇ります。 “経験”を通じ可能性と将来像を描く「気づき」の場。ビジョン実現に必要な専門性を身につける「学び[…]

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大学ジャーナルオンライン編集部

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