2021年に創立100周年を迎える桜美林大学。創設者清水安三が、中国北京の貧困地域で開設した女子教育機関を創始とする。大学名は、創設者が戦前学んだ米国オハイオ州のオべリン・カレッジと、開設の地が桜の雑木林であったことに由来する。オベリン・カレッジに倣ったリベラルな校風の下、リベラルアーツ教育と北京で培った国際教育を柱に、首都圏私学の中でも独自のポジションを占める。この春から第5代学長になった畑山浩昭先生に、その抱負と桜美林大学の将来展望をお聞きした。

 

創立100周年とその先の100年へ向けて
桜美林大学のこれまでとこれからの課題

 学長就任にあたり、私に課せられた使命は、本学を「国際的に通用するキャンパス」に仕上げ、「日本にあるグローバル大学」として「世界から人が集まる学びの場」に成長させるとともに、(学生一人ひとりの夢や希望を一緒になって実現させていくことを通じて)「一人ひとりの学生が成長実感を得られる大学」にしていくことだと考えています。

 本学の建学の理念は「キリスト教精神に基づく国際的な人物の育成」で、その哲学は、いかなる学びも社会に役立つ、人に尽くせるものでなければならないという「学而事人(がくじじじん)」という言葉、あるいは「隣人愛」という言葉に集約されます。この他者および社会への貢献と、創設のいきさつも含めて国際的―-、今日の言葉で言えばグローバルであることは、本学の教育の根幹をなすものとして、どんな時代においても変えてはならないものだと考えています。一つの学校が100年近く続いてきたのには訳があり、そのよき伝統は守り続けなければなりません。

 一方で、世界のグローバル化と国内の少子化によって、大学、また本学を取り巻く環境は大きく変わってきています。
18歳人口が激減していく中で、大学としてどう生き残っていくのか。高等教育機関に対する社会の評価も変わりつつあり、国による支援もこれまでのようには期待できません。このような状況の中で、各大学には、何をより所にどう社会に貢献していくのかが問われています。

 また国際的であるという特徴も、スーパーグローバル大学創成支援事業に象徴されるように、国内の他の多くの大学がグローバル展開を目指す中、従来通りのやり方ではその中に埋没しかねません。各時代の学長がおそらくそうだったように、変えてはならないものは守り、変化する時代、社会に対応した変革をリードするためのかじ取りが、強く求められていると痛感しています。

 

学群の拠点化で、大学(ユニバーシティ)と学群(カレッジ)、
それぞれのレベルにおけるブランド強化と経営の安定を

 こうした中、私が改革のための第一の課題と考えているのが、これまで10年にわたって改革の目玉とされてきたカレッジ構想をさらに押し進め、学群の拠点化を実現させることです。

 本学は戦後、小さなカレッジからスタートしましたが、今や学生数10,000人を超える中規模校の中でも上位に入る大学へと成長しました。輩出する卒業生も多く、規模に対する責任も出てきました。またそれにともない、これまで目指してきた(ファミリーライクというか)アットホームな雰囲気の大学、一人ひとりの顔が見える大学であり続けることにも限界が見えはじめてきました。

 そこで10年前、それまでの学部をリベラルアーツ系とプロフェッショナル系の学群に改組し、各学群を1,000から2,000人規模の教育・研究の拠点とし、大学全体、つまりユニバーシティの教育理念に基づきつつも、それぞれが特定領域の特色ある教育・研究を展開できるようにしました。教育の専門性と柔軟性を同時に有するシステムへの転換です。

 現在進行中の学群の拠点化は、それを一歩推し進めたもので、それぞれをよりふさわしい教育・研究の環境に置こうというものです。たとえばビジネスマネジメント学群は都心の新宿キャンパスに、芸術文化学群は自然豊かな本町田キャンパスにといった具合です。こうすることで、大学と学群は、それぞれのレベルでブランド力を高めることができ、学生や教職員の満足度の向上ひいては経営の安定、にも寄与すると確信しています。

 

「学而事人」と「隣人愛」をグローバルに実践できる人物が育つ大学に

 2021年以降も見据えた中長期的な目標としては、国内外から評価されるグローバル大学になることを掲げました。「『学而事人』と『隣人愛』をグローバルに実践できる人物が育つ大学」と認識され、「世界から人が集まる大学」です。

 開設以来、国際人育成を教育の一方の柱としてきた本学ですが、国家という境界線を、ものだけでなく情報や文化が軽々と越えていく今日、かつてのように、日本人学生に英語などの外国語を徹底的に教育し、留学させることで外の世界を体験させるだけでは、世界の様々な課題に対応できる人材の育成にはつながりません。今求められるのは、他の国や地域、異なる民族の人々と共に学び、彼らの考え方、行動様式に触れ、互いの文化的な背景まで理解し、国際的な思考や行動様式を身につけることです。

 そのためには、今以上に多くの学生を海外へ送り出す必要があることはいうまでもありませんが、さらに多くの学生にこうした体験をしてもらうには、大学自体をグローバルな環境にする以外に方法はありません。大学、ユニバーシティは、その語源となった言葉が宇宙、世界を意味するように、その時々の世界を反映、集約する場所でなければならない、大学は今こそ、可能な限り様々な国や地域から教職員や学生を受け入れて、グローバルコミュニティを形成しなければならないと私は考えています。

 具体的には、2021年を見据えた本学の中長期的な施策をまとめた「国際化戦略 REDEMPTION 21」でも示したとおり、外国人留学生数、教職員数ともに全体の25%程度、あるいはそれ以上にしたいと考えています。この実現のためには、ソフト面では、教育システム、学生サービスなどを国際的な基準に適合させる必要があります。またハード面では、寮や生活環境の整備なども課題でしょう。

 前者においては、すでにアジア各地の大学の多くが、欧米の基準に合わせるなど、共通の基準が整いつつありますし、本学には、オベリン・カレッジをモデルにしてきたことなどから、他大学に先行する取組が少なくありません。セメスター制、アドバイザー制、GPAの活用、科目ナンバリング制、成績評価の基準、レイトスぺシャリゼーション等、すでに多くは導入済みで、今後はこれらを徹底していくことで、真にグローバルで通用するシステムに仕上げていけると思います。

 一方ハード面については、大きな資金が必要なためそれほど簡単ではありませんが、私はそれができなければ、日本にあって真のグローバル大学と呼ばれるものは実現できませんし、今後巣立つ学生たちに、大きな付加価値を与えることはできないのではないかと考えています。

 外国人教職員を増やすことについては、日常使う言語の壁はありますが、今後はAIによる翻訳の精度も高まりますから、それらを上手に活用すれば大学運営をマルチリンガルなものにしていけるのではないと期待しています。

 大学経営の視点に立てば、学生募集や教職員の採用がグローバルに展開できるようになれば、高等教育の事業マーケットは大きく広がりますから、国内の少子化に一喜一憂することはなくなると考えています。

一人ひとりの学生が成長実感を得られる大学に

 近年の国内の大学を取り巻く環境の大きな変化としては、文部科学省主導による大学入試改革も見逃せません。従来一般的だった一回の学力試験の結果だけで入学者を選抜するのではなく、受験生の意欲や適性、また高校時代の教科外の活動なども含めて選考する方法へ変えていこうというものです。入学者を選抜するという発想から、入学許可を与えるという発想への転換と言い換えられるかもしれません。

 これまで高校の進路指導では、大学進学実績を重視し、学力試験の成績を少しでも上げることに力を入れるところが少なくありませんでした。生徒を少しでも偏差値の高い大学へ送りだす、その先にあるのは、公務員や大企業、ブランド企業への就職です。これはこれで否定すべきことではありませんが、私は高校のすべてがそうする必要はないと考えています。

 大学においても、本学のような独自の教育目標を持つ私立大学では、国の改革を待つまでもなく、18歳段階での教科の学力の完成度だけを見るのではなく、高校での予習、部活動や文化活動、本人の価値観などにも目を向け、入学後の成長が期待できそうな生徒を入学させるべく、様々な方法を模索してきています。というのも私たちは、入学から卒業までの4年間で大きく変わる学生が少なくないことを長年この目で見てきているからです。

 彼らの多くは、高校時代、様々な予習や活動に積極的にかかわり、偏差値とは異なる自分なりの価値観を育んできた学生です。「受験、受験」で過ごしてきたわけではない。そんな彼らは、教員との出会いなど、新たな気づきを得ると急速に成長します。もちろん私たちが一般的な勉強を軽視しているという意味ではありません。それどころか私たちは、入学してきた学生には、「学而事人」を掲げ、自らの学びや経験を社会に還元すべきであるとするとともに、それをより大きなもの、力強いものにするには、できるだけ高いレベルの知識、技能を身に付けなければならないと語っているのです。

 大学入試改革がスタートラインに立った今、あらためて考えなければならないことは、アドミッションの改革を活かすエンロールメントの構築です。入学してきた学生が入学後に変われる環境、そのための気づきに出会える機会、環境をいっそう充実させていくこと。

 そのためには、入学から卒業まで一貫して、学生一人ひとりを細かくフォローするという意識の持てるようなサービス体制の整備が急務です。もちろんその中には就職を見据えた正課外のサポートも含まれます。また教員には、教育研究に専念できる環境を整備し、その質の向上を目指してもらう。そして職員と学生との小さなコミュニティが多数生まれるようにし、グローバルも含めて、多様な学生集団の中で桜美林の文化を醸成していけるような環境を整えていきたいと考えています。
 

桜美林大学
学長
畑山浩昭 先生
1985年 桜美林大学文学部卒(B.A.)
1994年 ノースカロライナ大学シャーロット校大学院修士課程修了(M.A.)
2001年 ノースカロライナ大学グリーンズボロー校大学院博士課程修了
2010年 マサチューセッツ工科大学大学院修士課程修了(M.B.A.)
2012年 桜美林学園 学園長補佐・国際センター長
2015年 桜美林大学 副学長
2018年 桜美林大学 学長

 

この記事が気に入ったらおねがいします。

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。